テイ・デイ・エスの校正品質。厳格なルールと工夫、そして最後は「人」が守る!
デザイン会社の「品質」と聞いて最初に思い浮かべるのはデザインのクオリティ面での品質だと思います。ですが商業デザインにおいて、成果物に「間違いがない」「伝わりやすい」ことも大切な「品質」といえます。
私たちテイ・デイ・エスは、間違いが許されない、伝わることを重視したコミュニケーションツールを数多くデザインしてきました。その歴史の中で失敗や改善を重ねて築いてきた「厳重なルールや体制」があります。
この記事では「縁の下の力持ち」であり、品質の「守護神」ともいえる校正者にフィーチャーして紹介します。
飯島 直記(写真左):校正者/校正ディレクター
伊東 大二郎(写真右):校正者/校正ディレクター
校正者インタビュー
━まずはテイ・デイ・エスの校正業務の概要を教えてください
<伊東>
テイ・デイ・エスはデザイン会社なので、クライアントから依頼をいただいて各媒体のデザイン制作をします。原稿や修正のやり取りをする際にどうしても人の手が入るため、気をつけていても制作物に間違いや認識のずれが発生する可能性があります。
校正業務の役割は、制作物の誤字脱字など「明らかな間違いの指摘」で品質を守ることと、「より伝わりやすくする指摘」で制作物の品質を向上させることだと思っています。
<飯島>
伊東さんと同じ認識です。私は校正作業に優先順位をつけていて、制作や修正に伴う間違いを最初に見ます。次に間違いやすい周辺箇所を見て、最後に素読みで全体を見ます。
明らかな間違いは「赤文字」で指摘して、間違いではないがより良くできる箇所は「鉛筆で疑問出し」をするなど、依頼者である制作ディレクターやその先のクライアントに、直さなければいけない箇所と、直した方がよりベターな箇所を「わかりやすく伝える」ことが大事だと思っています。
━制作ディレクターからの依頼はどんな流れで来るのですか?
<飯島>
依頼は前日の所定時間まで受け付けて、校正当日までに「校正セット」と呼ばれる「校正依頼書」「原稿」「デザインカンプ(校正紙)」などの校正に必要な書類一式を出力かデータで受け取ります。
校正室では「窓口担当」と「校正担当」に分かれていて、「窓口担当」は出力、依頼内容の把握、不明点の確認をして、注意点や補足情報を添えて「校正担当」へ説明と指示をします。制作ディレクターとのやり取りはすべて窓口担当が行っています。
<伊東>
補足すると、校正作業はミスが許されないため、極力、校正者が作業に専念できる環境を作る必要があります。作業の途中で、校正依頼の窓口対応をすると「ながら作業」になりミスを誘発する懸念があるため、校正者が校正のみに専念できる「担当制」の形を取っています。
━制作ディレクターとはどんなコミュニケーションをするのですか?
<伊東>
制作ディレクターが出社していれば、「校正セット」を対面で受け取るので、そのまま打ち合わせ形式で案件や依頼内容の確認をします。テレワークの場合、どうしてもテキストコミュニケーションが多くなるため、校正をかけるのが初めての案件や、内容面が複雑だったり、ニュアンスを理解するのに確認が必要な場合は、電話でヒアリングをしたり、校正手法や校正にかけられる時間について交渉をします。校正者目線できちんと品質を守れるところまで調整するイメージです。
<飯島>
依頼受付時の対応と同じように、校正をした後のコミュニケーションも大切にしています。基本、「校正セット」を見れば、指摘内容が伝わるように疑問や赤字の記述はすべて記載していますが、より正確に伝えるため対面や電話でのコミュニケーションも心がけています。
ー作業時間の交渉の話がありましたが、校正作業の時間は予想できるものですか?
<飯島>
先ほど出てきた「校正依頼書」には、制作ディレクター目線での予想校正作業時間をざっくりとした所感で書いてもらっています。対して、校正者は校正後に実際にかかった時間を記載します。制作ディレクターも校正者もこの作業時間の確認を長年繰り返すうちに、予想の精度が上がっていて、現在ではかなり信頼できる目安となっています。
<伊東>
あとは、これまでの過去案件の校正履歴や依頼書は保管期間の間、記載されたボリュームや予想と実際のギャップを後からも確認できます。普段の校正作業や過去の資料を見ることで、自然と作業時間の肌感が養われています。
ー過去の履歴は他にどんなことに使うんですか?
<伊東>
何かミスを発見した際に、前工程のデザインや校正履歴を見てなぜすり抜けたのかを確認します。それ以外にも過去の校正物をケーススタディとして見たり、豊富な練習材料としてスキルアップに使っています。間違えやすい校正物を課題として共有して、お互い添削をするなど、チームとしてスキルアップに取り組む文化もあります。
<飯島>
過去案件は生きた教材として答え合わせもできるのでかなり練習になりますよね。先輩が校正したものを自分でもやってみて差分で気づきを得る練習をしてました。進行中の案件でも、学びになったり、今後も引き続き注意が必要なことがあれば、校正者間で情報共有して、学んだり備えたりする姿勢は常にあります。
━良い文化ですね。校正は制作工程のどのタイミングが効果的ですか?
<伊東>
私たちは制作ディレクターの依頼を受けて校正する立場なので、タイミングのコントロールはディレクターの采配ですが、基本は修正の度に「毎回」入れるのが理想です。ほとんどの案件が初校提出前から納品時まで複数回にわたって校正を行っています。
稀に、軽微な修正や毎日発生する案件など、物理的な理由で「後追い校正(提出後の校正)」や「履歴校正(数回の修正をまとめた校正)」をしますが、制作ディレクターが事前に相談をくれるのがほとんどで、スケジュールや体制面など相談しながら校正漏れがないようにしています。
<飯島>
テイ・デイ・エスでは、デザイナーやディレクターの社員も「校正研修」や「校正テスト」を受講していて、各社員が一定の校正スキルを持っています。制作進行時はディレクターやデザイナー自身も校正をして、加えて私たちが専門職として校正するという厳重な体制にしています。
さらにフォーマット化した「校正依頼書」に、コピペ箇所ありや手打ち箇所ありなどの作業内容も記載してもらったり、作業者目線で特に不安だったり見て欲しい懸念点を記載してもらったりと校正精度を高める工夫もしています。
ー厳重ですね。例えば時代と共に校正手法って変化するんですか?
<伊東>
校正といえば「突き合わせ、あおり検版(残像法)、素読み」(下図参照)あたりですが、何年か前から、作業前と作業後の差分抽出ができる「デジタル検版」も主流になっています。制作ディレクターがデジタル検版をかけた差分出力を校正セットに含めて提出してくれるので、意図しない箇所のミスを発見・把握するのに非常に役に立っています。
<飯島>
最近は映像チェックの依頼も増えましたよね。映像は印刷物とは異なり、「テロップ」という文字情報に加えて、「動き」や「音声」もあるので、映っているものや音が止まったり、途切れたり、場面転換後に残っていたり、タイミングがズレていたり、ということが発生します。
そのため、校正にあたっては、倍速は使わず途中で止めながらチェックし、場合によってはデバイスやブラウザ毎に同じ動画を確認するので、すごく時間がかかります。
<伊東>
今後でいうとAI校正も期待できそうですよね。気になっていて、開発の話なんかを聞くと情報収集をしています。今のところライティング補助としては素晴らしいと思っていますが、正しい日本語や言い回しの指摘の精度はもう一歩の印象です。これから品質があがればデジタル検版のように効率的に取り入れたいのですが、とはいえ、制作物に何か変更があれば、最後は必ず人のチェックを入れなければというのは変わらないとも思っています。
ー校正室があるのはデザイン会社では珍しいですよね?
<伊東>
新聞社や雑誌社に多いイメージですよね。デザイン会社に常駐の校正室があるのは少ないそうです。テイ・デイ・エスでは、金融機関の案件や発売前の商品に関する案件、大量のページ数がある冊子案件などが多く、情報の正確性や守秘義務には特に気をつける必要があるため、10年以上前に校正室が構築されたと聞いています。
<飯島>
他社の制作ディレクターに聞いてみたことがありますが、校正は必要に応じて校正者を呼んで対応していると言っていました。社内外のスケジュールだったり事務処理だったりを毎回調整するのは結構大変なはずなので、こうした校正品質をきちんと守るための環境はテイ・デイ・エスの強みとして活かしたいですよね。
<伊東>
そうですね。クライアントからの品質への要望に対応できる体制は大きな特長だと思います。社内に校正室があることで校正作業のスピード感もあがりますし、案件の特性や注意点を継続的に把握して校正できるのも品質面の強みになるので今後もアピールしたいです。
ー校正室の「強み」を特に活かせるのはどんな案件ですか?
<伊東>
わかりやすいのはボリュームが多くて期間も長い「大型案件」だと思います。シンプルに規模感への対応力の強みも活かせますし、それ以外にも大型案件は「編集ルール」「表記統一集」「デザインガイドライン」といった表現ルールが多いので、先ほど話したような案件の特性や注意点の把握をした状態で校正することで、スピードや品質の強みが活かしやすいです。
例えばクライアント担当者や制作ディレクターに交代があったとしても品質担保の安心材料の1つにもなれます。
<飯島>
大型案件はルールがとても多いので、校正時にチェックすべきものも多くて作業時間や集中力を要します。そのため校正者2名によるダブルチェック体制を基本としており、1名はルールや案件内容を把握した校正者をアサインして、もう1名は先入観のないまっさらな目で見る校正者をアサインするというような工夫をすることもあります。
ーパーソナルな面も聞いてみたいのですが、こだわりの校正道具、得意不得意、職業病はありますか?
<伊東>
道具は割と一般的ですね。調べ物の際には『記者ハンドブック』(共同通信社)をよく使用します。あとは子ども向けの制作物を担当することがあるので、学年毎に習う漢字を『学年別漢字配当表』(文部科学省HP)で調べたりします。
好きな校正は「素読み」で、テイ・デイ・エスでは、企業の周年記念誌などを作ることがありますが、組織の沿革を読むのが結構好きで、読み物として楽しくて頭に入ります。
職業病は、以前と比べて注意書きのような細かい文章まで読むようになりましたね。気になってしまうというか(笑)
<飯島>
道具は私も一般的ですが、PCやiPadを赤字やカンプの見えにくい箇所の拡大に使用します。好きな校正は「誰も気づかずスルーされてきた間違いを発見すること」です。シンプルに気持ち良くて好きです(笑)
苦手ではないですが、プレッシャーを感じるのは「人名」と「数字」です。人名は特殊な漢字が多くてきちんと調べる必要があるのと、数字は間違えやすいけど間違えが許されないので。
職業病は、読んでわからない文章があると調べる癖が付いたことです。
ーありがとうございます。最後に一言ずつお願いします。
<飯島>
クライアントから原稿支給された案件だと「原稿が正しく入っていれば良い」とされるケースもありますが、折角、テイ・デイ・エスに依頼していただけたからには、正しさだけでなく、より良くするという面でも期待に応えたいです。
<伊東>
例えば「本当に狙ったターゲット層に向けての最適な文章表現か」など、校正で品質向上できることも多々あります。校正室には、本当に力のあるメンバーも揃っているので、今日お話しした内容も含め、品質を重視した制作物を計画されている場合にはぜひ相談していただきたいです。
テイ・デイ・エス|品質保持の強み
テイ・デイ・エスでは、UX/UI、ブランディング、WEBサイト、グラフィック等のデザインを中心に、マニュアル、冊子といったボリューム対応が必要な制作物も企画・ライティングから承ります。「金融業界」や「保険業界」といった特に誤りの許されない制作物への品質管理に対する評価をいただいています。
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