リフレクションとは?企業と個人の成長を促す実践的手法
個人・組織を問わず、日々の経験やトラブルから学びを得て改善につなげるためには、リフレクション(振り返り)を行うことが大切です。
しかしただ振り返ればいいというわけではなく、適切な方法で行う必要があります。この記事ではリフレクションについての基本から、リフレクションと混同されやすい反省・内省などとの違い、リフレクションのメリット、ポイントを解説します。
リフレクションとは
ビジネスシーンにおいてリフレクション(reflection)とは、日常業務からいったん離れて自らの行動・言動・考えを客観的かつ深く省みることです。
「reflection」という英単語には、「鏡や水面に映った映像、光・音・熱などの反射」といった意味があります。透き通った水面や鏡が、モノや風景のありのままを映し出すように、主観をはさまず客観的に物事を省みることをリフレクションと呼びます。
フィードバック・内省・反省との違い
リフレクションと混同されやすい言葉として、フィードバック・内省・反省があります。これらは物事を振り返り考えを巡らすという点ではリフレクションと共通していますが、少し異なります。以下、それぞれの違いをみていきましょう。
フィードバックとリフレクションの違い
フィードバックとリフレクションは、振り返りを行う主体に違いがあります。フィードバックとは、自分の行動・言動に対する他者からの評価を受けることです。フィードバックにおいて、振り返りを行うのは他者になります。一方、リフレクションにおいて自分の行動・言動を振り返るのは自分自身です。
フィードバックがリフレクションをするきっかけになることは少なくありません。そういった意味で、フィードバックとリフレクションには関係性があると言えるでしょう。
フィードバックについては、以下で詳しく解説しています。
フィードバックはいかにして生活を変えることができるのか(職場と家庭双方において)
内省・反省とリフレクションの違い
内省と反省は、自分自身の行動・言動を振り返るという点では、リフレクションと共通しています。しかし、振り返りの仕方に違いがあります。
反省は主に失敗やミスを振り返りの対象とし、自分の何が悪かったかどう改善・修正すればよいか考えることを指します。それに対してリフレクションは失敗・ミスに限らず、自分の行動・言動全てが対象となるのです。
一方、内省はフィードバックや反省と比べると最もリフレクションに近いですが、やはり意味が異なります。内省にて焦点を当てるのは、自分の感情・思考です。内省では、それらがどのように形成されたかを考えます。
リフレクションで焦点を当てるのは、経験や行動、それらから得られた気づき・学びです。リフレクションではミス・失敗に限らず経験・行動から学びを得て、今後の行動・言動の改善を目指します。
リフレクションの目的
リフレクションの目的は、未来志向で自分の行動・言動を改善していくことです。
現代では、多様性が重要視されています。企業においては、各従業員がそれぞれの強みを活かして成果を積み上げていかなければなりません。しかし個々人の強みは、ただ考えるだけで見出すのは困難です。
リフレクションにより客観的かつ詳細に自らの行動や言動を振り返ることで、組織の中で活かせる自分の強みは何かを見つけられます。これにより、個々人の主体性も強化されるでしょう。
メンバーそれぞれの主体性や強みが強化されることによって、それが組織としての大きな成果にもつながります。
個人でリフレクションを行うメリット
リフレクションは個人で行っても、様々なメリットがあります。
自己理解と成長の促進
リフレクションを続ければ、自分の行動・言動を客観視することが習慣化され、その結果として自分自身のより深い理解にもつながります。また自分自身を律して改善を続けていく姿勢も身に着くため、成長も促進されるでしょう。
経験から学びを得る
リフレクションを繰り返すことによって、経験から学びを得ることも習慣化されます。
様々なことを経験しても、振り返りをしなければ学びにつながりません。リフレクションによって、貴重な経験を無駄にせず学びを得ることができます。
柔軟性と適応力の向上
ビジネス環境の変化が激しい昨今では、柔軟性・適応力は非常に重要です。経験に基づいてリフレクションを行う習慣を身に着けることで、様々な事態に対して柔軟に対応できるようになります。柔軟性が身に着くと、速いスピードで変化するビジネス環境に対する適応力も向上するのです。
企業がリフレクションを取り入れるメリット
リフレクションは、企業価値や組織力を高めるためにも有効です。
パフォーマンスの向上
社内でリフレクションが普及・習慣化することによって、各従業員が自主的に業務改善を続けるようになります。各メンバーが組織で活かせる自分の強みを発見し、それを実践することで、組織のコミュニケーションが改善されチームワークを高めることができます。さらにその結果、組織全体のパフォーマンス向上も見込めます。
学習と成長の文化醸成
メンバーが自ら考えず指示を待つだけでは、成長は見込めません。
一方、リフレクションが習慣化された企業では従業員の主体性・自主性が育まれ、自ら学習と成長を続けようとする文化が醸成されます。メンバーは自ら業務の改善点を発見し、自発的に仕事の品質向上を追求するようになります。
リフレクションが習慣化した組織では、メンバーが自発的に業務の改善点を発見し、自律的に業務の効率と質の向上に取り組みます。その結果、企業の価値を高めるようなイノベーションにつながるのです。
リフレクションの実践方法
リフレクションで効果を上げるためには、適切な方法で行う必要があります。ここではリフレクションを実際に行う際の方法を解説します。
【STEP1】
リフレクションに適した環境と精神状態をつくるため、なるべく静かな空間を見つけます。重要なメールの返信や急ぎの仕事を終わらせ、リフレクションに集中できるようにしましょう。
【STEP2】
「今日はどんな1日だったか」「私は今、何を考えているか」などを、自分自身に問います。
【STEP3】
スマートフォンやパソコンの通知に邪魔されないよう、紙にリフレクションをした内容を書き留めます。何が起こり、どのような気づきや学びがあったかなどをまとめましょう。
例:
・何が起こったのか?
・自分は何を感じ、何に反応したのか?
・そのこと(経験)からどのような洞察・気付きや結論を得ることができたか?
・私は何を学んだか?
・今後の経験を向上させるために、学んだことをどのように応用できるか?
・学んだことに基づき、どのような行動を取ることができるか?
【STEP4】
必要に応じ、リフレクションで決めた行動に期限を決め、その内容を誰かと共有するとよいです。これによって期限内にやり遂げる責任が生じることから、行動が促進されます。
より詳しい方法については、我々ハイパーアイランドが提供する TOOLBOXにてご紹介しています。
個人リフレクション – TOOLBOX | Japan | Hyper Island
習慣のリフレクション – TOOLBOX | Japan | Hyper Island
企業やチームで取り入れる際のポイント
企業やチームでリフレクションを取り入れる場合、個人より多くの対策と検討を重ねる必要があります。
1.リフレクション文化の定着
リフレクションを企業の文化として定着させ根付かせ、日常的に実施するようにします。そのためにはゆっくり時間をかけ、地道にリフレクションに取り組むことが必要です。具体的にはまず、組織のリーダーが率先してリフレクションを行い、その重要性を従業員やメンバーに伝えます。
リフレクションが文化として根付かない組織では、リーダーやメンバーをサポートできる人材がいないことが少なくありません。リーダーをはじめとして、メンバーを先導できる人材がまずリフレクションを実践・習得する必要があるのです。
2.定期的にリフレクションの場を設ける
定期的なミーティングやワークショップで、プロジェクトや業務終了後にリフレクションを行う時間を設け、成功や課題を共有する仕組みを作ります。
リフレクションを適切に行うには、集中できる時間の確保が必要です。業務などで急かされているような状況では、リフレクションを効果的に行うことはできません。
その一方で目の前の業務が優先され、リフレクションはおろそかになってしまう傾向があります。そこで業務終了後など、ゆっくりリフレクションに集中できる時間を意図的に設けることが有効です。
3.リフレクションのツールやフォーマットを提供する
従業員が簡単にリフレクションを行えるように、専用のツールやテンプレートを提供するのも効果的です。
たとえば、記入項目・記入欄をまとめた、リフレクションシートを用意するのもよいでしょう。リフレクションシートがあれば、シートの指示に従って内容を埋めることで有効なリフレクションを行えます。また指導役が使うフィードバックフォーマットを用意すれば、スムーズにフィードバックを実行しやすくなるでしょう。
4.フィードバックとの組み合わせ
上司や同僚からのフィードバックとリフレクションを組み合わせることで、振り返りのプロセスが深まり、より具体的な改善や学びに繋げることができます。
特にリフレクションを続けていくなかで、客観的に思考するのが難しくなったと感じたときはフィードバックが有効です。フィードバックをもとに考え直すことによって気づきが生まれ、新しい気持ちでリフレクションに臨めるようになります。
リフレクションを行うタイミング
リフレクションは、対象となる経験をした直後にその記憶が薄れないうちに行うことが大切です。
また、対象となる業務などが完了しない段階でも、課題があると感じているという場合はそのタイミングで行います。それにより、課題を解決するための道筋を明確化できるからです。
具体的なタイミングとしては、以下が挙げられます。
1.プロジェクトやタスクの終了後
仕事やプロジェクトが完了した直後にリフレクションを行います。どうして成功できたか、課題はなかったかを振り返ることで、次のステップに活かすことができます。
2.定期的なスケジュールに基づいて
毎週、毎月、四半期ごとなど、定期的にリフレクションを行うことで、長期的な成長を促進します。対象となる期間内で、何が成功してどんな課題があったか、課題を解決するためにはどうするべきかなどを検討しましょう。
以下は、1年の振り返りのフォーマットですが、こちらを月の振り返り、四半期の振り返りに応用することもできますのでご活用ください。
3.重要な出来事や意思決定の後
大きな意思決定や変化の後に、何がうまくいったのか、何を改善すべきかを考えるためのリフレクションが効果的です。重要な出来事や意思決定の後には、優先的に解決すべき課題やじっくり振り返るべき経験が含まれていることが少なくありません。リフレクションによってこれらを発見し、どのような学びがあったか、どのように解決すべきかを導き出します。
4.フィードバックを受けた後
上司や同僚からフィードバックを受けた直後も、リフレクションを行うべきタイミングです。フィードバックの内容を振り返り、どんな学びがあるかどのように改善につなげられるかを考えます。
まとめ
リフレクションとは、日々の業務から離れ、自らの行動や言動、考えを客観的にじっくりと省みることを指します。リフレクションは反省と異なり、失敗やミスだけでなく自分の行動や言動全てが対象となります。主観をはさまず鏡のようにそれらを客観的に見返して、成功できた理由や改善策などを導き出すのです。
リフレクションは個人のパフォーマンスを高めるのはもちろん、企業の価値や組織力を高めるためにも必要な方法論と言えます。まずはリーダーがリフレクションを実践し、その重要性を理解して、組織全体に広めることが必要です。リフレクションが文化として組織に根付くことで、継続的に成果を上げられるようになります。
Hyper Island Japanチーム
北欧発のビジネススクール「Hyper Island」の日本チームです。
Hyper Islandのメソッドや思想をもとに、企業や個人の学びにつながる情報を発信しています。