リーダーシップスタイル完全ガイド:状況に応じた選び方と活用方法【簡易診断付き】
リーダーシップスタイルは、チームや組織の目標達成を左右する重要な要素です。リーダーのアプローチにはさまざまな種類があり、どのスタイルを選ぶかによって、メンバーのモチベーションやパフォーマンスに大きな影響を与えます。特に多様な働き方がある現代においては、一つのスタイルに固執するのではなく、チームの状態やプロジェクトの目標、組織文化に応じて柔軟に使い分けることが求められます。本記事では、各リーダーシップスタイルの特徴や活用法を解説し、最適なスタイルを選ぶためのヒントを提供します。
リーダーシップスタイルとは
リーダーシップスタイルとは、リーダーが目標を達成するためにチームや組織を導く際の方法やアプローチを指します。リーダーシップには、指示型、民主型、自由放任型など様々なスタイルがあります。
リーダーシップスタイルを理解することは、チームの状態によって効果的なリーダーシップを発揮するための鍵となります。それぞれのスタイルには長所と短所があり、適切なスタイルを選ぶことで、チームのモチベーションやパフォーマンスを最大化できます。また、現代では、コラボレーションや柔軟性を重視したリーダーシップが求められる傾向があります。リーダーとしての成長には、自身のスタイルを理解し、状況に応じて進化させることが重要です。
主要なリーダーシップスタイルの概要、メリット、デメリットは以下の通りです。
指示型リーダーシップ(Directive Leadership)
指示型リーダーシップは、リーダーが具体的な指示を与え、チームメンバーがその指示に従って行動するスタイルです。リーダーは目標達成のための詳細な計画を立て、メンバーに明確なタスクを割り当て、進捗を管理します。このスタイルは、特に緊急時や高度に構造化された環境で効果を発揮します。
■メリット
リーダーが明確な指示を出し、迅速な意思決定を行うことで、特に緊急時や明確な手順が必要な業務において効率的にチームを動かすことができます。
■デメリット
メンバーの自主性や創造性が制限されやすく、リーダーへの過度な依存や、メンバーのモチベーションや士気の低下につながる恐れがあります。また、変化への適応が送れる場合があります。
民主型リーダーシップ (Democratic Leadership)
リーダーが意思決定やチーム運営においてメンバーの意見を積極的に取り入れ、協力的な環境を作るリーダーシップスタイルです。このスタイルでは、リーダーは権威的な支配ではなく、メンバー間の協働と合意形成を重視し、チーム全体で問題解決や目標達成に向けて動きます。
■メリット
メンバーが意思決定に参加することで主体性が高まり、チームのモチベーションや満足度が向上し、創造的なアイデアが生まれやすくなります。メンバー間のコミュニケーションが活発になり、信頼関係が深まります。
■デメリット
合意形成に時間がかかり、意思決定が遅れる可能性があります。また意見を重視するあまり、最終的な責任があいまいになることがあります。さらに全員の意見を取り入れるのが難しく、不公平感を生む可能性もあります。
自由放任型リーダーシップ (Laissez-Faire Leadership)
リーダーがチームメンバーに大きな自由と自主性を与えるリーダーシップスタイルです。このスタイルでは、リーダーが細かく指示や監督を行わず、必要なリソースやサポートを提供した後は、メンバー自身が意思決定や問題解決を進めることを重視します。専門性が高く、自律的に働けるチームで特に活用されることがあります。
■メリット
メンバーに自由と自主性を与えることで、創造性やイノベーションを促進し、責任感や自律性を育てることができます。また、柔軟でストレスのない環境を作りやすいこともメリットです。
■デメリット
リーダーの関与が少ないためにチームが方向性を見失いやすく、組織やプロジェクトが停滞するリスクがあります。また、メンバー間の脳力格差によりパフォーマンスが不均一になる場合があります。リーダーシップ不在と捉えられることで信頼を損なう可能性もあります。
変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)
ビジョンや目標を示し、メンバーを鼓舞して変革を促すリーダーシップスタイルです。このスタイルのリーダーは、自身の行動を通じて模範を示し、メンバーの内発的な動機付けを高めます。従来のやり方に縛られず、革新や組織の成長を重視し、メンバーの個人の成長と組織全体の目標を結びつける特徴があります。リーダーには、高いカリスマ性とコミュニケーション能力が求められます。
■メリット
チーム全体のモチベーションとエンゲージメントを高め、革新や組織の成長を促進することができます。個々の成長を重視するため、メンバーのスキルアップや自己効力感の向上につながることもメリットの一つです。
■ デメリット
高い目標や変化への要求がメンバーにプレッシャーを与え、ストレスを与える可能性があります。リーダーへの依存度が高まり、リーダー不在時にチームが機能しにくい点、短期的な成果が重視されやすい点もデメリットとして挙げられます。
サーバントリーダーシップ (Servant Leadership)
リーダーがメンバーやチームの成功と成長を最優先に考え、支援やサポートに徹するスタイルです。リーダー自身が奉仕者として振舞い、メンバーが持つ潜在能力を引き出し、組織全体の目標達成を目指します。権威的な指導ではなく、信頼や共感、謙虚さを基盤としたアプローチが特徴です。
■メリット
リーダーがメンバーの成長や幸福を優先することで、信頼感や心理的安全性が高め、チーム全体の満足度と協力体制が強化します。これにより、メンバーの創造性や問題解決能力が発揮され、長期的な組織の成長につながります。
■ デメリット
リーダーが支援に集中するあまり意思決定が遅れたり、短期的な成果が得られにくい可能性があります。また、自身に過剰な負担がかかる可能性があります。
コーチング型リーダーシップ (Coaching Leadership)
リーダーがメンバー一人ひとりに対して個別の指導やサポート行い、スキルや能力の向上を促すリーダーシップスタイルです。このスタイルは、メンバーの潜在能力を引き出し、自主性や目標達成能力を育むことを重視します。リーダーは指示や命令ではなく、質問や対話を通じてメンバーの成長を支えます。メンバーの成長が組織全体の成功に直結する環境や、長期的なスキル開発が必要な場面で効果を発揮します。
■ メリット
メンバー個々の成長を促し、スキルや自己効力感を向上させることができます。特に、長期的に高いモチベーションを維持しやすく、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。
信頼関係が深まり、メンバーが主体的に行動するようになる点もメリットです。
■ デメリット
個別対応に時間や労力がかかるため、短期間で成果が求められる場面には不向きな場合があります。また、全員に不平等に対応できない場合、不満や格差が生じる可能性もあります。さらに、リーダー自身に高いコーチングスキルが求められるため、リーダーの経験や能力によって成果が左右されることも課題です。
ビジョン型リーダーシップ(Visionary Leadership)
リーダーが明確な未来のビジョンや方向性を示し、それに向けてチームを鼓舞しながら導くリーダーシップスタイルです。このスタイルのリーダーは、説得力のある目標を設定し、メンバーがその目標に向かって主体的に動けるように働きかけます。特に、変革や、新しい挑戦が求められる場面において有効です。
■ メリット
メンバーに明確な目的意識を与え、モチベーションやエンゲージメントを高めることができます。チーム全体が同じ方向に向かって動けるため、協力体制が生まれ、一体感が生まれやすいことも利点です。
■ デメリット
ビジョンが現実的ではなかったり、具体性に欠けていたりする場合、メンバーが困惑し、目標達成が難しいと感じる可能性があります。また、リーダーにはカリスマ性やコミュニケーション能力が求められるため、それらが不足しているとビジョンが伝わらず、逆効果になる場合もあります。長期的な目標に注力しすぎると、短期的な課題や現実的なリソース管理がおろそかになるリスクがあります。
ここまで、7つのリーダーシップスタイルを見てきました。リーダーシップスタイルは、チームの状態や成熟度などに応じて選ぶ必要がありまずが、まず自分がどのタイプに近いのかを知ることが大切です。それにより、自身の強みを生かしながら、チームや状況に応じたリーダーシップを発揮できるようになります。
ここでは、リーダーシップスタイルを以下の3つのタイプに分類しました。簡単な質問を通じて、どのタイプに近いリーダーシップスタイルを持っているのかを診断していきましょう。
指揮重視型(指示型、自由放任型)
明確な指示や管理、または最低限の監督を通じてタスク達成を重視。
チーム重視型(民主型、サーバント、コーチング型)
信頼関係の構築やメンバーの成長を重視。
ビジョン重視型(変革型、ビジョン型)
ビジョン提示や変革を通じて、長期的な目標や革新を促進。
それでは始めてみましょう。次の質問を読み、自分の考えややり方に一番近いものを選んでください。
1.プロジェクトの進め方を決める際、どのように方針を立てますか?
A: 各メンバーに裁量を与え、進め方について自由に考えさせる
B: チーム全員で話し合い、合意形成を通じて進め方を決定する
C: 長期的な目標やビジョンを踏まえた全体の方針を示し、それを基に計画を作成する
2.メンバーが課題に直面しているとき、どのように対応しますか?
A:必要に応じて介入するが、基本的にはメンバーに任せる
B: メンバーの話を聞き、一緒に解決策を考える
C: 長期的な視点で解決策を考え、次に活かせるアイデアを提示する
3.チームの成果を評価する際、何を重視しますか?
A: 期限通りに目標を達成したかどうか
B: チーム内の協力やメンバーの成長
C: 成果が組織のビジョンや未来にどれだけ貢献したか
4.プロジェクトの進捗が遅れている場合、どのように対応しますか?
A: 問題点を明確化し、具体的な指示を与えて迅速に対応する
B: チーム全員で原因を話し合い、合意を得たうえで修正する
C: 遅れを挽回するための革新的なアイデアやアプローチを提案する
5.新しいメンバーが加わったとき、最初に行うことは?
A: 明確な業務指示を与え、早く成果を出せるよう指導する
B: チームとの関係構築を支援し、サポートする環境を整える
C: 組織やプロジェクトのビジョンを共有し、その中で新メンバーの役割がどう重要なのかを説明する
6.問題が発生したとき、どのようなアプローチを取りますか?
A: 迅速に解決策を決定し、チームに指示する
B: チーム全員の意見を聞き、解決策を一緒に模索する
C: 問題が将来的にどう影響するかを考え、戦略的な対応を導く
7.日常的な業務で最も重視することは何ですか?
A: タスクが確実かつ効率的に完了すること
B: メンバー同士の協力や信頼関係を深めること
C: 業務が長期目標やビジョンに向けて進んでいること
8.新しい戦略を導入するとき、どのように進ますか?
A: 必要な手順を詳細に計画し、メンバーに具体的なタスクを指示する
B: メンバーの意見を取り入れ、戦略がチーム全体で共有されるようにする
C: 戦略が達成するビジョンや期待される変革を伝える
9.メンバーのモチベーションを高めるために行うことは?
A: 明確な目標を設定し、進捗を管理して達成感を提供する
B: 個々の努力を認め、感謝の気持ちを伝える
C: チーム全体で共有する意義ある目標やビジョンを示す
10.リーダーとして、自分が最も重視する価値観は?
A: 効率性とタスクの達成
B: メンバーの成長と協力
C: 未来志向
診断結果
Aが多かった人:重視型
あなたは、タスクの完了を最優先に考えるリーダーシップスタイルに向いています。目標達成のためであれば、メンバーに自由な方法で取り組ませる柔軟性を持ち、必要に応じて指示型や自由放任型のアプローチを使い分けます。このスタイルは、成果を重視する環境で効果的ですが、メンバーの意見や感情を軽視しないよう、適切なコミュニケーションを心掛けることが重要です。
Bが多かった人:チーム重視型
あなたはメンバーとの信頼関係を築き、一人ひとりの成長を支援する力を持つタイプです。コミュニケーションが得意で、チーム全体の協力体制を強化することができます。ただし、全員の意見を尊重するあまり、意思決定が遅くなる場合もあるので注意が必要です。時にはリーダーとして方向性を示す決断力を発揮することが求められるでしょう。
Cが多かった人:ビジョン重視型
あなたは、変革型やビジョン型のリーダーシップスタイルに向いています。明確な未来のビジョンを示し、メンバーを鼓舞しながらチームを新しい目標へ導く力があります。また、変革を促すことで、現状を打破し、長期的な成果や革新を生み出すリーダーシップを発揮できます。ただし、ビジョンが現実的でなかったり、メンバーへのフォローが不足したりすると、信頼を損なう可能性があるため、ビジョンと現実のバランスを意識することが大切です。
リーダーシップスタイル診断を通じて、自身の傾向や強みを知ることができたでしょうか。
しかし、実際の現場では、一つのスタイルだけに固執するのではなく、状況やチームに応じてスタイルを選ぶ柔軟性が求められます。
自分の強みを活かしつつ、どのようにリーダーシップスタイルを選び、活用すべきかについて考えていきましょう。
以下のポイントを押さえることが重要です。
1.チームやプロジェクトの状態
リーダーシップスタイルを選ぶ際には、チームの成熟度やプロジェクトの緊急度・規模を見極めることが重要です。
・緊急時には、素早い意思決定が求められるため、指示型や変革型が適しています。
・長期プロジェクトでは、メンバーの成長を支えたり、共通のビジョンを共有したりするコーチング型やビジョン型が効果的です。
・成熟度の低いチームには、具体的な指示やサポートが必要な指示型やコーチング型が向いています。
・成熟度の高いチームでは、自主性を重視する自由放任型やビジョン型が適しています。
2.メンバー自身の特性や強み
チームメンバーの経験、スキル、モチベーションなどにより、スタイルを変えることもひとつの方法です。
・経験豊富で自律的なメンバーには、自由を与える放任型や目標を共有するビジョン型が適しています。
・経験が浅くサポートが必要なメンバーには、指導や助言を重視するコーチング型やサーバントが効果的です。
・モチベーションが低いメンバーには、変化を促し鼓舞する変革型や、信頼関係を築く民主型が役立ちます。
3.リーダーとメンバーの関係性
リーダーとチームメンバーとの関係性の深さや信頼の度合いも、適切なリーダーシップスタイルを選ぶ上で重要な要素です。信頼関係や心理的安全性の有無によって、効果的なスタイルが異なります。
・メンバーと強い信頼関係が構築されている場合は、意見を取り入れながら共同で意思決定を行う民主型やコーチング型が効果的です。
・信頼がまだ構築されていない段階では、明確な指示を与え、安心感を提供することが重要です。そのため、指示型やサーバントが適しています。
・まだ心理的安全性が低く、意見を出しにくい雰囲気のチームでは、民主型やサーバントを用いて、リーダーが対話の場を積極的に設け、メンバーの声に耳を傾ける姿勢を示すことが重要です。
・自律的で高度なスキルや経験を持つメンバーが多い場合は、自由度を与える自由放任型、ビジョン型が適しています。リーダーはビジョンを共有しながら大局的にサポートします。
4.組織や文化の影響
リーダーシップスタイルを選ぶ際には、組織全体の文化や価値観、働き方の慣習が大きく影響します。リーダーシップがその組織や文化に適合しているかで、メンバーの受け入れ方や成果が大きく変わります。
・組織文化が階層的で指示を重視するトップダウン型の組織では、リーダーが明確な方向性や指示を示す、指示型、ビジョン型が求められます。
・組織文化がフラットで自律性を重視する場合、メンバーの主体性を引き出す民主型、コーチング型、サーバント型が適しています。
・イノベーションや新たな目標の達成が求められる文化では、リーダーがビジョンを示し変革を促進する、変革型、ビジョン型が効果的です。
・組織が安定性や既存のプロセスを重視する場合は、明確な指示やサポートを提供する指示型、サーバント型で、安定した運営を維持することが求められます。
5.目標や成果へのフォーカス
リーダーシップスタイルは、リーダーが何を達成したいのか、目標の性質や成果へのフォーカスによっても選び方が異なります。
・明確な期限や具体的な成果が求められるような、短期的な目標達成を重視する場合、タスクを細かく指示し、サポートを提供する指示型、サーバント型が効果的です。
・長期的にチーム全体の成長や組織文化の形成を目指す場合、メンバーの主体性や価値観にフォーカスする民主型を中心として、サーバント型、ビジョン型を組み合わせるスタイルが適しています。メンバーのエンゲージメントが高まり、持続的な成果を生み出すことができます。
・目標達成が難しい課題や大きな変革が必要な場面では、リーダーが明確なビジョンを提示し、メンバーを鼓舞することが重要です。そのため、変革型、ビジョン型が適しています。チーム全体が目標に向けて一致団結し、困難な課題にも取り組みやすくなります。
まとめ
リーダーシップスタイルの選択は、リーダーとしての成功に直結します。それぞれのスタイルの特徴を理解し、チームや組織の状況、目標に応じて柔軟にスタイルを切り替えることが大切です。また、自身のリーダーシップスタイルを把握し、強みを活かしながらメンバーの成長や文化醸成を支援することも重要です。時には複数のスタイルを組み合わせ、短期的な成果と長期的な成長を両立させるバランスが求められます。本記事を参考に、自身のスタイルを見直し、状況に応じたリーダーシップを発揮してみてください。
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Hyper Island Japanチーム
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