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2025年に注目すべき15のテックトレンドとは?

2025.03.24 更新

#Hyper Island#フューチャーシナリオ#テクノロジー

テクノロジーの進化は、産業構造を根本から変革し、ビジネスの未来を大きく左右します。
世界中の企業が新たな成長機会を模索する中、AI、金融、ヘルスケア、産業、リテールなどの分野で、どのような技術が台頭するのでしょうか?

本記事では、CB Insightsが発行した「Tech Trends 2025」をもとに、2025年に注目すべき15のテックトレンドを解説します。CB Insightsは、テクノロジー、投資、M&A、スタートアップの動向をデータと分析を通じて提供する調査会社であり、企業戦略やベンチャーキャピタルの意思決定支援に強みを持っています。

本レポートでは、6つの主要分野に分けて、今後のビジネスや市場動向に大きな影響を与える革新的な技術を紹介しています。本記事では、その内容を要約し、これからの市場変化を捉えるためのヒントをお届けします。

目次

    金融サービス

    1.サイボーグ型ウェルスアドバイザー

    金融アドバイザーは、勤務時間全体の約70%をクライアントや見込み客との直接的なやり取り以外の業務に充てられ、クライアント対応の時間は全体の2割以下にとどまっています。特に高収益のアドバイザーほど、クライアント対応時間を増やす傾向があります。

    大手金融機関はAIを活用し、アドバイザーの生産性を向上させています。モルガン・スタンレーはAI導入の結果、2024年第3四半期に純収益の過去最高額を記録しました。一方で、中小のウェルスマネージャーは、規制やデータプライバシーの懸念、技術スキルの不足からAI導入に慎重な姿勢をとっています。

    AIは、クライアント対応を補強し、パーソナライズされた顧客対応を可能にする最も成熟したユースケースとされています。特に、ジェネレーティブAI(生成AI)がマーケティング業務の自動化を推進しており、すでに50以上のAI系ウェルステックパートナーが実績を持っています。

    今後の課題として、規制の不透明さとAIとの統合が挙げられますが、AIはウェルスマネジメントの効率化と顧客対応強化において重要な役割を果たすと考えられています。

    2AIエージェントが金銭を扱う時代の到来

    AIエージェントとは、大規模言語モデル(LLM)を基盤とし、独立して思考しタスクを実行するシステムを指します。近年、このAIエージェントが人間の代わりに取引や決済を行う可能性が注目されています。しかし、現在の決済システムは人間向けに設計されているため、AIがシームレスに利用するには課題があります。特に、本人確認(KYC)や不正防止の仕組みが整っていないため、広く普及するには改善が必要とされています。

    この分野では、仮想通貨が解決策の一つとして注目されており、CoinbaseSkyfireなどの企業が、AIエージェントが仮想通貨を利用して取引できる仕組みを開発しています。また、StripeAIエージェント専用の仮想クレジットカードを提供し、決済の仕組みを拡張しようとしています。さらに、AmazonGoogleも、AIが自律的に購買や予約を行う技術の開発を進めています。

    ただし、これらの仕組みが普及するためには、決済インフラの適応、本人確認の確立、消費者の信頼確保が必要となります。Oktaなどの企業はAIの信頼性を担保する認証システムの開発を進めており、こうした取り組みが整えば、まずは小規模な決済や購買からAIが活用される可能性が高いです。今後、AIエージェントが人間の代わりに商取引を行う時代が到来するかが注目されます。

    3.仮想通貨が主流に向けて小さな一歩を踏み出す

    2024年第3四半期までに、仮想通貨に関する企業の言及回数が1,271回に達し、再び注目を集めています。特に、決済業界や金融機関、テクノロジー企業がブロックチェーン技術やデジタル通貨への投資や提携を加速させています。TransakRippleとの提携、MetaMaskとの仮想通貨対応クレジットカードの発行、HQLAxへの投資など、業界全体で仮想通貨の活用が進んでいます。

    また、ステーブルコイン市場も成長を続けており、StripeによるBridge11億ドルでの買収は、仮想通貨業界最大のM&A取引となりました。これにより、ステーブルコインが決済インフラの重要な役割を担うことが期待されています。仮想通貨市場の成熟とともに、企業の参入が増え、より安定した金融インフラとしての活用が進む可能性があります。

    4.フィンテックの評価圧縮が買収機会を生む

    フィンテック企業(Fintech企業)とは、「金融(Finance)」と「技術(Technology)」を組み合わせた企業であり、デジタル技術を活用して金融サービスを提供する企業のことを指します。

    フィンテック企業のM&A評価額は、2021年のピーク時の116百万ドルから2024年には最高額146百万ドル、最低額60百万ドルと変動を見せており、評価額の低下が買収の機会を生んでいます。特にVC支援企業のM&A時の従業員1人当たり評価額は、2021年の1.7百万ドルから2024年には1.3百万ドルに減少し、資金調達の厳しさが影響しています。

    フィンテック企業のM&A動向として、資金燃焼率の高い企業の買収が進み、RevelShift4による買収) や Visible AlphaS&P Globalによる買収) などが2024年に実施されました。また、120以上のフィンテック企業がM&A対象となる条件に該当し、今後2年間で30%以上の確率で買収される可能性があると予測されています。特に、過去12か月で従業員数が5%以上減少し、過去2年間に資金調達を受けていない企業がターゲットになっています。

    フィンテック業界の成長鈍化がM&Aの動きを加速させており、2024年には回復の兆しも見られるものの、今後も統合が進む可能性が高いと考えられます。

    ヘルスケア & ライフサイエンス

    5AIによる疾患管理が新たな段階へ

    患者の症状評価や疾患の早期発見にAIを活用する企業が急成長しています。会話型チャットボットを用いて症状を分析し、疾患の可能性を計算する技術が注目され、2024年には投資案件や企業買収が急増しています。 

    主な投資・買収事例として、GYANTFabricに買収)、UbieGoogle Venturesなどから資金調達)、SenselyMediktorに買収)などが挙げられます。 

    また、AIが疾患の症状が現れる前に特定する技術も進化しており、アルツハイマー病、心疾患、がん、肝疾患などの早期発見に寄与しています。こうした技術の進展により、予防医療の発展や治療の最適化が期待されている状況です。

    6RNA治療の投資ラッシュ

    RNA治療とは、特定の遺伝子を標的にし、病気の原因となる遺伝子発現を抑制または必要なタンパク質を生成することで、従来治療が困難だった疾患への新たな治療法を提供する技術です。RNA干渉(RNAi)、抗センスオリゴヌクレオチド(ASO)、メッセンジャーRNAmRNA)の3つの主要アプローチがあり、特に遺伝性疾患、がん、心血管疾患などの治療に期待されています。

    RNA治療市場は2016年以降急成長し、2022年にはASO治療薬の売上が18億ドルに達しました。また、新型コロナウイルスワクチンの成功により、mRNA技術の発展が加速しました。RNAi治療のリーダーであるAlnylam Pharmaは、肝臓をターゲットにしたRNAi治療から中枢神経系(CNS)疾患への適用を進め、既に5つのFDA承認薬と15種類以上の開発中治療薬を保有しています。

    さらに、新興バイオテクノロジー企業が、異なる疾患へのRNA治療の適用を推進しています。City TherapeuticsRegeneron Venturesが出資)やSwitch TherapeuticsEli Lillyと提携)など、多くの企業が製薬大手と連携しながら新規RNA治療の開発を進めています。RNA治療市場は今後も拡大し、従来の医薬品では治療が難しかった疾患に対する新たな治療選択肢として確立されていくと予測されます。

    7.自律型ロボットが介護分野に注目

    米国の医療業界では、2030年までに医師が139,000人、看護師が63,000人不足する見込みであり、高齢化の進行に伴い人材不足が深刻化しています。これに対応するため、ロボット技術の導入が加速しており、介護支援、病院業務、ラボオートメーション、遠隔医療などの分野で活用が進んでいます。特に、介護ロボットや病院業務を支援するロボットの開発が活発化し、数千万ドル規模の資金調達が相次いでいる状況です。

    また、TeslaFigureなどのヒューマノイドロボット企業も介護市場への参入を進めており、AIを搭載したロボットが在宅介護のサポートや病院内業務の効率化を目指しています。Elon Muskの「Optimus」ロボットは、家事や介護、日常タスクをこなす汎用性を持つとされ、今後の市場の成長が期待されています。

    ロボット技術の進化と市場の関心の高まりにより、AIとロボット工学の融合が進み、医療分野での投資やM&Aも活発化しています。今後、これらの技術が進化することで、医療業界の人手不足の解決に寄与する可能性が高まっています。

    AI(人工知能)

    8AIM&Aが次の企業戦略の波を引き起こす

    2020年以降、企業によるテクノロジーM&Aの中でAI関連の買収の割合は2倍に増加し、2024年には300件以上のAI企業の買収が行われています。特に、NvidiaSnowflakeAccentureDatabricksといった企業がM&Aをリードしており、ビッグテックに代わってAIインフラやデータ管理企業が主導する形へと変化しています。

    AI関連のM&Aでは、チャットボット市場とマーケティングのパーソナライゼーション技術が最も注目されており、企業はカスタマーサポートや営業の自動化を目的としたAIの買収を積極的に進めています。また、NvidiaSalesforceThomson Reuters などの企業は2024年にAI関連の買収を前年より倍増させ、製品やサービスへのAI統合を加速させています。

    今後のM&A対象として、SOC AIエージェント(M&A確率55%)やコンピュータービジョン&デジタルツイン(M&A確率50%)など、8つの有望なAIスタートアップが特定されており、AI技術の獲得競争はさらに活発化すると予測されています。企業はAIの買収を通じて、より高度なAI技術を組み込み、競争優位性を確保しようとしており、今後もM&Aの流れが続く見込みです。

    9LLMの説明可能性の進化

    大規模言語モデル(LLM)などの高度なAIは、その意思決定プロセスが不透明な「ブラックボックス」問題を抱えており、モデルの説明可能性(Explainability)を向上させる研究が進められています。

     研究者たちは、AIが特定の出力を生成する理由を解明し、制御するための手法を開発しており、ローカル分析(個別の出力の説明)とグローバル分析(モデル全体の理解)の2つのアプローチが存在します。特に、特徴帰属分析、因果トレーシング、回路発見などの技術を活用し、AIの透明性向上を目指しています。

    近年の研究では、Claude 3 Sonnetモデルの内部に数千万の「特徴」があることを発見し、これらを操作することでモデルの挙動を変えられることが示されました(「Scaling Monosemanticity」研究、20245月)。また、Sparse Autoencodersを活用した新手法で、LLM1,600万の特徴をマッピングする技術が開発されています(20246月)。

    説明可能AIXAI)は、規制業界での活用が進んでおり、自動運転、医療、信用スコアリングなどの分野で重要な役割を果たしています。例えば、Equifax70件以上のAI特許を取得し、信用決定へのXAI導入を推進。また、医療分野では患者の病歴データを活用し、透明性の高い診断AIが開発されています。

    今後、AIの説明可能性が向上することで、より信頼性の高い意思決定が可能となり、幅広い分野での普及が加速すると予測されています。

    10.オープンソースLLMはトップの座を譲るが、小型モデルで優勢

     大手テクノロジー企業は、高性能なクローズドLLMを重視しながら、小型のオープンモデルも提供しています。例えば、MicrosoftOpenAIはクローズドモデルを優先する一方で、MetaAlibabaはオープンソースLLMを積極的に推進しています。 

     エンタープライズ市場ではクローズドモデルが優勢であり、高い精度、低いハルシネーション、強力なサポート体制などが企業に選ばれる理由です。特に、セキュリティやカスタマイズのニーズが強い企業は、クローズドモデルを好む傾向があります。一方で、オープンソースLLMは小型モデルの開発と収益化の戦略にシフトしており、「フリーミアム」モデルを活用して無料公開と有料サービスの組み合わせを進めています。 

     2024年には、MicrosoftGoogleAmazonOpenAIAI関連スタートアップを積極的に買収し、技術と人材を確保。クローズドモデルの開発企業は、ベンチャーキャピタルからの資金調達でも優位に立っています。 

     今後のトレンドとして、クローズドLLMは高性能なエンタープライズ市場で主流を維持しつつ、オープンソースLLMは小型モデルと収益化の試みに注力する構図が続くと予測されます。また、クローズドとオープンのハイブリッド戦略が一般的になる可能性が高まっています。

    11.アメリカがAI競争をリードするも、中国がオープンソース分野で追随

     アメリカは世界のAI投資の71%を占め、圧倒的な資金力でAI分野のリーダーシップを維持しています。2024年も、アメリカのスタートアップがAI投資の7割以上を獲得しており、AI技術の発展を加速させています。また、世界のAI企業の40%以上がアメリカに拠点を置いており、技術者の集中により、他国との差が広がる可能性があります。

     一方、中国は特にオープンソースのLLM(大規模言語モデル)分野で急成長しており、Alibabaの「Qwen2」モデルは、20246月時点でオープンソースLLMランキングのトップに立ち、OpenAIに対抗する存在となっています。

     主要企業の戦略を見ると、アメリカはクローズドLLMを中心に市場をリードしています。

     Microsoft OpenAIと提携し、クローズドLLMでリーダーを目指す

    Google Geminiシリーズでクローズド戦略を継続

    Meta Llamaシリーズを開発し、オープンソースを推進

    Amazon AIインフラの強化と企業向けサービスを拡大

     一方、中国のAlibabaTencentはオープンソースLLMや独自のクローズドLLMで競争を進めています。

     今後の展望として、アメリカは依然としてAI市場のリーダーであるものの、中国のオープンソースLLMの台頭により競争が激化すると予測されます。特に、企業向けAI市場ではクローズドLLMが主流ですが、一般向けのAIツールではオープンソースLLMの影響力が拡大する可能性があります。

     結論として、現時点ではアメリカがAI競争をリードしていますが、オープンソースLLMの成長により、中国が強力なライバルになりつつあります。今後、クローズドとオープンソースの戦略の違いが市場の展開を左右すると考えられます。

     

    企業

    12.企業向け空間コンピューティングが定着へ

     2024年にApple Vision Pro が発売され、拡張現実(AR)やコンピュータービジョンを活用した空間コンピューティングが注目を集めました。Appleは関連技術の買収を進め、この分野の強化を図っています。

     空間コンピューティングは、現実世界とデジタルコンテンツを融合させた没入型体験を提供し、企業の業務効率化に貢献 しています。特に、以下の産業での活用が期待されています。

     ・オフィス:デジタルワークスペースのカスタマイズ、リモートチームの仮想コラボレーション、データの可視化

    ・ヘルスケア:3D解剖画像の視覚化、医療トレーニング、手術計画のシミュレーション

    ・製造業:工場レイアウトの最適化、遠隔トレーニング、3Dモデリングによる製品設計

     一方で、デバイスの高価格が市場の普及を妨げる要因となっているものの、企業は業務の効率化を目的に積極的な投資を行っています。

     結論として、空間コンピューティングは企業向けに定着しつつあり、オフィス・医療・製造業を中心に導入が進んでいます。高価格が課題ですが、Apple Vision Proの登場により市場の成長が加速すると見られ、没入型体験を活用した業務革新が今後のトレンドとなるでしょう。

    小売と消費者

    13.小売業におけるパーソナライズの重要性

     パーソナライズされたプロモーションは、コンバージョン率を3倍向上させることが確認されており、小売業者にとって不可欠な戦略となっています。BigCommerceの幹部は、AIとテクノロジーがパーソナライズを可能にし、顧客のロイヤルティや収益を向上させる と述べています。 

     生成AIの活用により、あらゆる顧客接点で個別対応が可能になっています。たとえば、以下のような例があります。

      – Walmartは、2025年末までに「パーソナライズされたWalmart.com」を提供予定 

    – AI検索ガイダンスで、ユーザーごとに最適な検索結果を提示 

    – LLM(大規模言語モデル)を活用し、膨大な商品データの最適化を実現 

    バーチャル試着やAIを活用した購買アシスタントが登場 

     また、パーソナライズを強化するeコマース向けAI企業が急増しており、202410月に発表された市場マップでも、その成長が確認されています。 

     結論として、パーソナライゼーションは小売業にとって不可避の戦略となり、AIとデータ活用によって今後さらに進化し、消費者体験の向上につながると予測されます。

    産業

    14.次世代データセンターの到来

     AIの需要増加により、従来型データセンターでは対応が困難になっています。米国企業は1兆ドル以上を投資し、AIインフラの拡充を進めており、AmazonCEOもデータセンターやハードウェアへの投資加速を強調しています。

     データセンターの電力消費は2022年の460TWhから2026年には1,000TWh超へと倍増 すると予測されており、ビッグテック企業はエネルギー確保に向けた取り組みを強化しています。

     原子力:小型モジュール炉(SMR)やスリーマイル島の原子力発電所再開

    核融合:2028年からの発電購入計画

    地熱:150MWの地熱発電をデータセンター向けに供給

    また、エネルギー効率向上のため、液冷技術(リキッドクーリング)の導入が拡大しており、2024年の採用率20%2026年には38%に達する見込みです。

     結論として、AIのスケールアップにはデータセンターの進化が不可欠であり、エネルギー供給や冷却技術の革新が企業の競争優位性を決定づける重要な要素となるでしょう。

    15.宇宙産業へのアクセスコスト低下が投資熱を引き起こす

     宇宙打ち上げ回数が急増しており、過去5年間で5倍に増加しました。特にSpaceXの技術革新により、同社は競合他社の7倍の打ち上げライセンスを取得しており、市場を牽引しています。 

     軌道到達コストも劇的に低下しており、2008年には1kgあたり12,600ドルだったコストが、Falcon Heavy2018年)で1,500ドル、さらに将来のStarshipロケットでは500ドルまで下がる見込みです。 

     人工衛星技術の普及により、通信、モニタリング、リスク管理の分野で活用が進んでおり、2023年には打ち上げられた宇宙オブジェクトの73%SpaceXStarlink衛星でした。さらに、国家防衛や産業マッピング、環境監視にも利用が拡大しています。 

     宇宙関連スタートアップも急増しており、Y Combinator20249月に投資を奨励。宇宙空間での燃料補給、データセンター運営、高高度ソーラー航空機など、宇宙技術やインフラ開発を手掛ける企業への投資が加速しています。 

     今後は、人工衛星アプリケーション、宇宙インフラ、支援技術が注目分野となり、投資家の関心が高まると予想されます。

    Hyper Island Japanチーム

    北欧発のビジネススクール「Hyper Island」の日本チームです。
    Hyper Islandのメソッドや思想をもとに、企業や個人の学びにつながる情報を発信しています。