AQ(逆境指数)とは?定義やIQ・EQとの違い、評価レベルまで解説
AQ(逆境指数)は、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しい現代において、企業が成功をおさめるのに必要な人材の特徴を表す概念です。企業を力強くけん引する経営者やリーダーには、高いAQが求められます。この記事ではAQとは何か、さらにAQの高い人にみられる行動パターンや構成要素、評価基準、AQとよく比較されるIQ・EQとの違いについて解説していきます。
AQ(逆境指数)とは | 逆境に対処する力を指標化したもの
AQとは、あらゆる逆境に対して対応するために組み込まれた行動パターンであり、逆境(Adversity)に対処する力を指標化したものです。逆境に対して、脳や細胞が無意識のうちにどのように反応するかをAQで数値化することができます。AQという言葉のもとになっているのは、Adversity Quotientという英語です。AQはAdversity Quotientの頭文字をとってつけられており、日本語では逆境指数と訳されます。
AQという概念が生まれた背景
AQという概念を考案したのは、米国ハーバード・ビジネススクール客員教授のポール・G・ストルツ(Paul G. Stoltz)博士です。ストルツ博士は自身の研究において、目覚ましい活躍をするビジネスパーソンが、IQやEQ※が必ずしも高くないことに気づきました。
※IQ(知能指数)とEQ(心の知能指数)については後述します。
彼らはIQ・EQより、逆境に対応する力(AQ)が高かったのです。昨今では欧米をはじめ日本でも、ビジネスで成功するためにはAQが重要であると考えられています。
逆境に対面したときにみられる3つの行動パターン
ストルツ博士は、人が逆境に直面した際の行動パターンは3つに分かれると定義しています。
脱落組 | 逆境から逃げる
逆境に直面した際に、その状況に向き合わず避けようとするのが「脱落組」の行動パターンです。逆境に立ち向かうことなく、逃げ出してしまうことから脱落組と呼ばれます。脱落組の特徴として挙げられるのは、逆境をネガティブに捉えることです。脱落組は「逆境の原因は自分でない」と考え、他社や組織のせいにする傾向が見受けられます。
キャンパー | 我慢してその場にとどまる
逆境に直面した際に、乗り越えようとするのでなく我慢して現状維持をしようとするのが「キャンパー」の行動パターンです。逆境のなかでも我慢して同じ場所にとどまろうとすることから、キャンパーと呼ばれています。キャンパーは、どんなに逆境が続いても現状維持にこだわりがちです。しかし何も手を打たなければ現状維持どころか、後退は避けられません。組織にいる人材のうち、約8割はキャンパーのタイプと言われています。
登山家 | 逆境を乗り越えようと試みる
逆境に直面した際に、前向きな気持ちで乗り越えようとするのが「登山家」の行動パターンです。文字通り山を登るように困難な状況を乗り越えることから、登山家と呼ばれています。登山家はビジネスにトラブルはつきものと捉え、決して怖じ気づくことなく立ち向かうのです。登山家は組織のリーダーや経営者として、理想的なタイプと言えます。言うまでもなく、最も理想的な対処法であり、この登山家タイプはAQが高いと言えるでしょう。
AQとよく比較されるIQ・EQとの違い
AQとよく比較される指数として、IQやEQが挙げられます。IQとは「Intelligence Quotient」の略語で、知能の高さを数値化したものです。IQは日本語で「知能指数」と呼ばれています。日本でも従来からよく知られている概念であり、意味を理解している方が多いのではないでしょうか。
次にEQとは「Emotional intelligence Quotient」の略語で、日本語では「心の知能指数」「感情知性」とも訳されます。EQは自分や相手の感情を的確に管理し、活用する能力の高さを示す指数です。EQが高い人は自分の感情を制御したり相手の気持ちを理解したりする能力が高く、コミュニケーション能力に優れています。
このようにIQとEQは、AQとは異なる指標なのです。3つのうちIQは先天的なものですが、EQとAQについてはトレーニングによって高めることができます。IQやEQが高い人の方が、ビジネスパーソンとしても優秀であることは言うまでもありません。しかしストルツ博士は、ビジネスで成功するためには、IQやEQよりAQが重要であると主張しています。
AQを構成する4つの要素
それでは、AQについてもう少し詳しくみていきましょう。AQは、COREと呼ばれる以下に挙げる4つの要素により構成されます。
コントロール(Control)
責任(Ownership)
影響の範囲(Reach)
持続時間(Endurance)
COREは上記4つの英単語の頭文字をとって作られた言葉で、AQはこれら4つを評価軸として測定されるのです。
・コントロール(Control) | 自分の反応をコントロールできるか
「コントロール(Control)」とは、逆境に直面した際に自分自身の反応をどのくらいコントロールできるかという要素を指します。逆境に立ち向かうためには、自分の感情を制御できるかが重要なのです。またコントロールは、現状においてどのくらいプラスの作用を及ぼすことができるかという要素とも言われます。
・責任(Ownership) | 自分の問題として受け止められるか
「責任(Ownership)」とは、何が原因かに関わらず、逆境に直面した際に自分自身の問題ととらえ対処できるかという責任感を指す要素です。逆境に陥った場合、それを他人のせいにしてしまうビジネスパーソンは少なくありません。一方で企業に求められるのは逆境を自分の問題として捉え、最後まで責任感をもって対処できる人材です。
・影響の範囲(Reach) | 逆境がどれだけ影響すると考えるか
「影響の範囲(Reach)」とは、直面している逆境が自分の仕事や人生にどれだけの影響を与えると考えるかを意味する要素です。一口に逆境と言っても、その内容によって周囲に与える影響の大きさには差があります。実際には影響が小さいのに、大きいと判断してしまうと脱力感に襲われ乗り越えようとする気持ちを失ってしまうものです。逆境を乗り越えるためには、逆境の程度を客観的に判断し、どの程度の影響があるかをできる限り的確に予測できる必要があります。AQが高い人は、その判断を適切に行えるのです。
・持続時間(Endurance) | 逆境がどれだけ続くと考えるか
「持続時間(Endurance)」とは、今まさに直面している逆境がどれだけ続くと考えるかを指す要素です。その逆境は明日には解決できるかもしれませんし、1ヵ月経っても解決できないかもしれません。いずれにしろAQの高い人材は、逆境を「いつかは解決できる」と考え冷静に立ち向かうことができます。それに対しAQの低い人材は、逆境がいつまでも続くという感覚にとらわれ、立ち向かう意欲を失ってしまいます。
AQにおける5つの評価レベル
AQの高さは、以下にあげる5つの評価レベルによってあらわすことができます。自社で活躍するリーダーや経営者に求められるのは、このうちレベル4以上です。
逆境に直面すると、逃げ出してしまうレベル。AQの評価レベルで最も低い。 | ||
逆境に直面した際に、ダメージを受けるものの何とか生き延びることができるレベル。このレベルの人材は、現状を維持することにこだわる一方で前進することはできず、同じ場所に留まる傾向がある。 | ||
逆境に直面した際に、自分の問題として適切に対応できるレベル。ただし困難な逆境を乗り越える力まではなく、逆境が続くと自分を見失ってしまうこともある。企業の人材は、ほとんどがこのレベルに該当する。 | ||
逆境に直面した際に、その状況を適切に管理し的確な方法で解決を目指せるレベル。このレベルの人材は、大抵の逆境に対応が可能で、挫折や試練に屈してしまうことがない。組織のリーダーや管理者は、少なくともこのレベルが必要とされる。 | ||
逆境に直面した際に、それをチャンスに変えてしまうことができるレベル。このレベルでは、逆境を成長や成功の糧として対処することが可能になる。そのため、このレベルの人材は、逆境のなかでも企業に大きな成功をもたらすことさえある。 |
AQが高い人材・低い人材の特徴比較
AQが高い人材と低い人材は、それぞれ対照的な特徴を見出すことができます。以下、それぞれどのような特徴があるかみていきましょう。
・楽観主義者で立ち直りも早い ・常に学び成長しようとする ・常に活力があふれている ・逆境や変化を糧にする ・必要なリスクをとる ・困難な仕事も怯むことなくやり遂げる ・画期的な解決策を見つけることができる ・高いパフォーマンスを維持し、大きな成功をつかめる |
・無力感にとらわれがちで落ち込みやすい ・現状を維持しようとする ・常に無力感にさいなまされている ・逆境や変化を避ける ・必要でもリスクは避けようとする ・困難な仕事には手を出そうとしない ・価値の高いアイデアも見て見ぬふりをする ・能力を最大限まで発揮しようとはせず、成功をつかめない |
まとめ | AQを高めるためには
AQとは逆境への対応力を指標化したもので、AQが高い人材は逆境に強くピンチをチャンスに変えることもできます。ビジネスで成功をおさめるためには、高いAQが必要です。また企業に大きな成功をもたらす経営者やリーダーにも、高いAQが求められます。AQは後天的に高めることが可能な能力です。AQを高めるためには、逆境を成長の機会と捉えポジティブに考える必要があります。逆境に力強く立ち向かい続けることで、AQを伸ばすことができるのです。
ハイパーアイランドの研修では、実際に手を動かし、小さな挑戦を繰り返すようなをタスクが含まれています。実際のビジネスシーンでは、挑戦による失敗が許されない空気があるかもしれませんが、研修内プロジェクトにおいて実際に試して挑戦する、失敗するという体験を通して、単なるスキル習得ではなく、AQや、メタスキルを習得することが成果目標となっています。
ぜひ、自社の人材育成にお役立てください。
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※この記事はTDSブログへ統合する以前のddpostの記事です。