BANIとは?VUCAに代わる新しい世界を表す言葉
BANI(バニ)という言葉をご存知でしょうか?
VUCAという言葉なら聞いたことがある方がほとんどかもしれません。実はどちらも、複雑で混沌とした現代の世界を端的に表すキーワードです。それらに加えて、TUNAという言葉も存在します。BANIは従来からあるVUCAやTUNAに代わり、新しい世界を表すキーワードとして作り出されました。
ビジネス環境の変化が激しい現代において、企業が現代世界を理解し対策するためにもこれらのキーワードが役立つでしょう。この記事ではBANIの意味や、BANI時代を生き抜くヒントについて解説していきます。
VUCAは元々、1990年代に米軍が戦略的な状況を説明するために初めて使用した軍事用語です。冷戦の終結後、予測困難な変化や不確実性が増し、これまでの核兵器ありきの戦略では対処できない状況が生じました。そこで米軍はVUCAの概念を採用し、組織内での意思決定や戦略の立案に活用したのです。その後、2010年代頃から経営学やリーダーシップの分野で広く受け入れられ、組織の状況や環境を特徴づけるために使用されるようになりました。VUCAは、以下4つの言葉の頭文字を組み合わせて作られています。
Volatility(変動性)
ビジネスを取り巻く環境が予測不可能で不安定であることから、日常的な活動を妨げる多くの課題に直面することになるUncertainty(不確実性)
不安定な環境では、今後どのようなことが起こるか予測できないComplexity(複雑性)
分析に必要な情報は入手できるものの、その量や性質によって処理が困難であるAmbiguity(曖昧性)
膨大な情報の発信や誤解、複雑に絡み合う利害関係などにより状況を正確に把握することが不可能になる
実際、VUCAというキーワードが一般的に使われるようになった2010年代からは、デジタル技術の急速な変化や環境問題、社会構造の変化など、ビジネスを取り巻く環境が激変し、従来のノウハウが通用しない状態となっていました。企業は、新しい時代へ対応することが求められるようになったのです。
TUNA(ツナ)とは
VUCAと同様に、混沌な世界を表現するキーワードとして、2016年頃からオックスフォード大学のエグゼクティブ教育プログラムなどで使われているTUNAも挙げられます。TUNAはTurbulent(騒然とした)・Uncertain(不明確な)・Novel(斬新な)・Ambiguous(曖昧な)という4つの言葉の頭文字をつなげた頭字語です。
4つのキーワードの特徴は似ていますが、VUCAに比べると、TUNAの方がより複雑で身近な印象を受けます。
BANI(バニ)とは
BANIはVUCAやTUNAに代わる概念として、カリフォルニア大学教授で未来研究所のメンバーであるJamais Caisco氏により提唱されました。冷戦時代にVUCAというキーワードが生まれてから、長い年月が経っています。BANIはより現代に合う概念として、Caisco氏によって作られたのです。
BANIはVUCAやTUNAと同様に、4つの言葉の頭文字で構成されています。BANIのもととなっている4つの言葉は以下の通りです。
Brittle(脆弱性)
度重なるシステムの障害や唐突なコロナ感染拡大など、様々な脆弱性によってビジネス環境は常に脅かされていることAnxious(不安)
脆弱性によるリスクが常に存在することの不安Non-Linear(非線形性※)
ささいな決断により利益がもたらされることがある一方で、壊滅的な状態を招くこともあること
さまざまなことが必ずしも役に立つとは限らず、多大な努力が無駄になってしまう可能性があること
※非線形とは物体に関わる力(応力)と、力を加えられた物体に生じる変形(ひずみ)が比例関係にない(線形でない)状態を指す用語Incomprehensible(不可解さ)
非線形性がみられる状況や結果は、既存のロジックでは理解できず、調査の意味もないと感じられてしまうこと
Caisco氏によれば、VUCAはカオスな現状を描写するのには適しているとのことです。一方でBANIという概念はカオスだが受け入れなければならない未来を描写し、より身近に感じさせると語っています。
BANI時代を生き抜くための4つのヒント
BANI時代は常に様々な脆弱性に脅かされ、昨日成功したノウハウが今日通用するとは限りません。それでは、そんなBANI時代を生き抜くためにはどうすればよいでしょうか。4つのヒントを紹介します。
レジリエンス(適応能力/回復力)を養う
ビジネス環境を脅かす脆弱性に対応するためには、レジリエンス(適応能力/回復力)を養うことが必要です。レジリエンスを高めるためのポイント・方法として、以下が挙げられます。
変化へ柔軟に適応する
従来の成功体験に縛られ現状維持にこだわるのでなく、環境の変化にあわせ適応していく姿勢が必要です。想定外の事態に備える
長期的なビジネス環境の変化を考慮し、想定外の事態に陥った際も対応できるように複数のシナリオを準備しておきます。自社の強みを理解し、独自性を高める
自社の強みを正しくとらえ、その独自性を高めることによって環境の変化にも適応しやすくなります。現場を中心とした組織作りを意識する
意思決定の遅れによって、企業は取り返しのつかないダメージを受ける可能性があります。現場中心の組織作りを目指し現場に一定以上の裁量を持たせることで、意思決定を迅速化することが可能です。エンゲージメントを高める
エンゲージメントを高めることで企業と従業員の信頼関係が強化され、困難な状況に陥った際も組織が一丸となって対応しやすくなります。
アジャイル思考
アジャイル思考とは計画を細かい単位に分割し、PDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルをスピーディに回していくことです。ビジネス環境の変化が激しい現代において、企業はその変化に対し柔軟に対応していく必要があります。そのためにもアジャイル思考によって、フットワークを軽くして変化に対応し続けることが有効なのです。
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マインドフルネス
マインドフルネスとは意識的に日々の不安や評価といった雑念を取り払い、目の前の状況に集中する状態のことです。マインドフルネスは、禅の瞑想法などをベースとしたトレーニングによって実践することができます。
BANIの時代では、様々な要因による不安から自分を見失い、今現在の状況に集中できなくなることも少なくありません。その結果、従業員は本来のパフォーマンスを発揮することもできなくなってしまうのです。マインドフルネスは世界中で注目され、GoogleやYahooといった様々な有名企業が実践しています。マインドフルネスの実践によって、ビジネス環境を取り巻く様々な不安に迷うことなく、目の前の状況に集中できるようになるのです。
直感力を高める
ビジネス環境の変化に対してスピーディに対応するためには、直感力を高めることも必要です。直感とは、当てずっぽうの山勘とは一線を画します。直感は、これまで蓄積した経験や情報に基づいて、瞬時に判断することです。直感力を高めることによって迅速な経営判断が可能となり、ビジネス環境の変化に対応しやすくなります。
まとめ
BANIとは不安定で不確定な現代の世界を、端的に表すキーワードです。BANIはBrittle(脆弱性)・Anxious(不安)・Non-Linear(非線形性)・Incomprehensible(不可解さ)という4つのキーワードの頭文字を組み合わせて作られています。
BANI時代を生き抜くためには、脆弱性に対応するためのレジリエンスを養うことが必要です。また激しいビジネス環境の変化に対応するためのアジャイル思考や、ビジネスに必要な決断を迅速に行うための直感力も求められます。また不安や評価といった雑念にとらわれず、目の前の状況に集中するのに役立つマインドフルネスの実践も有効です。
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※この記事はTDSブログへ統合する以前のddpostの記事です。