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リスキリングとは?注目される理由やメリット、導入事例もご紹介

2023.03.03 更新

#Hyper Island#人材育成・リスキリング

日本の企業はDXを推進する反面、必要なデジタルスキルを持った人材が不足しているのは否めません。そうしたなかで注目されているのが「リスキリング」です。社内の自動化が進み、余剰人材が増加すると考えられる昨今、それら人材の雇用を継続するためにもリスキリングは有効とされます。既存の人材を活用するため、最適な方法だからです。この記事ではリスキリングとは何かといった概要や、必要な理由、手段について解説しています。その上でリスキリングの事例についても紹介しているので、あわせて参考にして下さい。

目次

    リスキリングとは

    リスキリング(Re-skilling)とは知識やスキルを習得し、新しい業務を担当したり職業につくことです。企業がDXの実践を求められている昨今では、デジタル技術などを習得した人材の確保が欠かせません。

    そうしたなかで国もリスキリングを推奨し、リスキリングを推進するための取り組みをはじめているのです。経済産業省はリスキリングを、以下のように定義しています。

    「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

    リカレント教育との違い

    リスキリングと混同されやすいのが「リカレント教育」です。リスキリングとリカレント教育は確かに、「社会に出た人が新しい知識やスキルを習得する」という点で共通しています。しかし両者は、全く異なるコンセプトをもつ考え方・取り組みです。

    リカレント教育は個人が「学び直す」こと自体を目的としており、職業と関係のない知識やスキルの学びも含まれます。またリカレント教育は学習と労働を相互に繰り返す概念であるため、学習の際には職場を離れる場合もあります。

    一方でリスキリングは、企業が自社の戦略として社員に学習機会を提供する取り組みとなります。企業にとってリスキリングの目的は、社員がスキルアップして、戦略上必要となる新しい業務をこなせるようになることです。また企業がリスキリングを実践する場合、一般的に社員は就業しながら学習を続けます。

    アップスキリング(Up-Skilling)との違い

    リスキリングと混同されやすい概念として、「アップスキリング(スキルアップ)」もあげられます。ただしアップスキリングもまた、リスキリングとは異なる概念です。

    アップスキリングは、社員が現在の職務に関する専門性を向上させるために学習することを目的としています。たとえばマーケティング部の社員が、マーケティングに関わるさらなるスキルを習得し現在の職務に活かすのがアップスキリングです。

    一方でリスキリングは新しいスキルや知識を習得し、新しい業務につくことを目的としています。たとえば営業部のスタッフがデジタル技術に関するスキルを習得し、デジタル専門の部署に移籍することを可能にするのがリスキリングです。

    アンラーニングとの違い

    「アンラーニング(学習棄却)」もまた、リスキリングと混同されやすい概念です。アンラーニングは新しいスキルを受け入れる態勢を整えるため、以前に習得した知識・スキルを一旦捨てることを指します。

    実績と経験を積み重ねたベテラン社員に対し、配置転換に必要な新しいスキルの習得を要求しても受け入れ態勢が整っていないと成功しません。その社員が、外部環境の変化による配置転換の意義を理解した上で、スキル習得に臨む必要があるのです。

    このようにアンラーニングは知識・スキルのリセットが主眼となるため、スキル習得を目指すリスキリングとは異なります。

    【関連記事】アンラーニングとは?必要とされる人材を育成するための方法論

    リスキリングが必要な理由

    リスキリングの概要についてみてきました。それでは、現在ではなぜリスキリングが注目され必要とされているのでしょうか。以下、主な理由をみていきましょう。

    DX化推進のため

    日本は他の先進国に比べ、デジタル化の波に乗り遅れているのは否めません。IMDが発表した「世界デジタル競争ランキング2022」によると、日本のランキングは過去最低の29位(前年は28位)でした。上位にはデンマークやアメリカ、スウェーデンといった欧米諸国の他、アジアでは韓国・中国・台湾といった国々が並びます。

    そうした中で日本の企業に求められているのは、社会のデジタル化に対応するためのDX推進です。企業が競争力を維持・向上していくためには、迅速にDXを進める必要があります。

    その一方で、DXに必要なデジタル技術のスキルをもった人材の不足は深刻な状況です。企業は社員のリスキリングによって、DX人材を確保する必要があります。

    自社の事業維持、雇用維持のため

    2013年にオックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授は、「自動化により、今後10~20年で米国では総雇用者の約47%が仕事を失う」と述べました。様々な業務が自動化されている昨今では、日本でも多くの人材が技術的な失業の憂き目にあう可能性が否定できません。企業はデジタル技術のスキルを持たないベテラン社員をはじめ社内人材を守るため、リスキリングによる再戦力化を目指す必要があります。

    他方で、2021年にはMicrosoft社が「世界中の社員のうち、41%が1年以内に会社を辞めることを検討している」との調査結果を発表しました。世界的に、多くの社員が自主退職を検討する「大退職時代に入っている」とも言われます。

    社員が退職を検討する大きな理由の1つが、「成長する機会がない」という点です。コロナをきっかけとして、自分の人生やキャリアを見直す人が増えています。このような社員を自社にとどめ雇用を維持し、自社事業を継続させるためにもリスキリングが求められているのです。

    リスキリングが注目されている背景

    2020年のダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)では、「リスキリング革命」が重要な議題として挙げられました。本会議では第4次産業革命に伴う技術変化に対応することを目的として、「2030年までに世界で10億人をリスキルする」と宣言しています。

    一方で日本国内では、2022年の秋に行われた臨時国会で岸田総理が「リスキリング支援のため5年で1兆円を投じる」との所信表明を行いました。その上で、この所信表明を盛り込んだ総合経済対策が取りまとめられ、労働移動円滑化の指針を2023年6月までに策定するとしています。リスキリングというワードは、2022年の新語・流行語大賞にもノミネートされました。

    企業がリスキリングを導入するメリット

    企業がDXを進めるためにも、リスキリングは必要です。一方でリスキリングは、企業にとって他にもメリットがあります。以下、実際にどんなメリットがあるかみていきましょう。

    採用コストの削減

    DX推進に必要な人材を新たに採用するより、社員へのリスキリングでDXのスキルを習得してもらう方がコストは少なくて済みます。DX人材は専門性が高いことから、その採用には多大なコストが必要となるでしょう。

    それに対し既存の社員に新しいスキルを身に着けてもらえれば、社内異動で済ませられるのでコストを節約できるわけです。社員にDXのスキルを習得してもらうことによって、自動化による余剰人材が増えてしまうのを抑えることもできます。

    社員のエンゲージメントの向上

    前項でも触れた通り、世界的な大退職時代の原因として、社員がその会社にいることで成長の機会を見いだせないことが挙げられます。リスキリングによって社員が希望するようなスキル向上の機会を与えられれば、社員のエンゲージメント向上にもつながるのです。

    企業がリスキリングを導入する際のステップ

    リスキリングを成功させるためには、準備から実践に至るまで複数のステップを順番に進める必要があります。以下、実際にどんなステップが必要になるかみていきましょう。

    STEP1. 自社に必要な人材像、スキルを設定する

    まずは現状のスキルを分析・可視化した上で、自社の経営課題や事業戦略を踏まえ今後必要となるスキルとのギャップを見極めます。現状のスキルを可視化する際は、AIや専用マネジメントツールなどの利用を検討するとよいでしょう。

    STEP2. 教育プログラムを選定する

    自社に必要となるスキルにあわせ、教育プログラムの選定を行います。自社内で用意するのが困難な場合は、外部の研修サービスやコンテンツを検討するのがおすすめです。プログラムの種類は、社内での研修やオンライン講座、eラーニングなどがあります。自社にとって最適な手段を選ぶようにしましょう。

    STEP3. 社員に受講させる

    教育プログラムの選定が終わったら、社員に受講させる段階です。事前にスケジューリングする方法と、社員に任せて都合のよい時間に取り組んでもらう方法があります。

    ただし、いずれの場合であっても業務時間外に受講させるのは推奨されません。社員の不満を招く上に過剰な負担を強いることになり、長続きしないからです。

    リスキリングは、会社にとって必要なスキルを社員に身に着けさせることから、就業時間内に行うべき業務の一環と言えます。業務上や社員の都合などで本来の業務時間外に行う方がよい場合は、時間外手当を支払うことが必要です。

    STEP4. 実践する場を提供する

    せっかく新しいスキルについて学習しても、活用する機会がなければ忘れてしまいます。そのため新しいスキルを、社員が実践できる場を用意するようにしましょう。

    配置転換などで実践する場をすぐに用意できない場合は、「サンドバック環境」を用意するのも一つの方法です。サンドバック環境とは、オンラインで自由に練習できる環境を指します。サンドバック環境上で仮に大きな失敗をしても、本番の環境には影響がありません。

    社員に初めから本番の環境を使わせるのが不安な場合も、サンドバック環境の利用は有効です。社員もサンドバック環境の方が、気軽に実践できるというメリットもあります。

    教育プログラム選定のポイント

    リスキリングでは、無料セミナーやウェビナーの活用を検討するのもおすすめです。それらであれば、企業にとっても社員にとっても負担になることはありません。

    またデジタルスキルに関しては業種・職種に寄らず、共通する部分が大きいという特徴があります。そのため自社でプログラムを作成するより、外部の組織や専門家に任せた方が効率的でコストを削減できる例も少なくありません。

    その際に役立つのが、国・地方自治体・民間企業が一体となり、リスキリングの場を創出・提供している「日本リスキリングコンソーシアム※」です。日本リスキリングコンソーシアムでは様々な企業によって、エントリーレベルから高度なAIスキルまで700を超えるプログラムが提供されています。(日本リスキリングコンソーシアムには、Hyper Island Japanも参画しています。)

    ※日本リスキリングコンソーシアム公式サイト
    https://japan-reskilling-consortium.jp/

    ただ外部リソースを活用する場合も、自社の文化や課題に適さず設定に失敗してしまう可能性も否定できません。リスキリングは単なる座学ではなく、新しい業務について活用できる必要があるからです。自社の課題見極めから施策への落とし込み、プログラム選定まで伴走してくれる信頼性の高いパートナーを選ぶことも重要となります。
    ※Hyper Island Japanでは、クライアント企業と共にリスキリング用のプログラムを設計・提供しています。

    リスキリングの導入事例

    ここではPOSレジをはじめ流通小売業向けソリューションを展開する、東芝テック株式会社様(以下、東芝テック)の導入事例を紹介します。東芝テック様には、社員のリスキリングを目的とした人材育成にHyper Island Japanの企業向けプログラムを採用いただきました。

    東芝テック様ではトータルソリューション事業強化を目指し、同分野のマネージが可能な人材のリスキルによる育成を目指されています。そうしたなかで講師が教科書を使って解説するのではなく、ファシリテーターとしてリードする当プログラムに驚かれたとのことです。

    また東芝テック様には、受講者が自分たちで発想・意見交換をして、振り返りから学んでいくプロセスに共感いただきました。その上でユーザー企業の背景を理解し、一緒にプログラム構築をするスタイルが決め手となり、当プログラムを採用いただいたとのことです。

    受講者の方からは、当プログラムで得た手法を実務に活用できるようになったという声をいただいています。また当プログラムを受講したことで、未知の領域にチャレンジし何かを変えていかなくてはならないという気づきが生まれたとのことです。

    ※東芝テック様の導入事例に関して、より詳細な内容は以下の記事をご覧ください。
    【Hyper Island企業向けプログラム導入事例】東芝テック株式会社 梅本様

    まとめ

    リスキリングとは知識やスキルを身に着けた上で、新しい業務や職業につくことです。不足しているDX人材を確保するためにも、企業はリスキリングによって社員にデジタルスキルを身に着けさせることが求められています。また自動化によって職種変更を余儀なくされる社員を有効活用したり、社員に成長機会を与えたりするためにもリスキリングは有効と言えるでしょう。

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    ※この記事はTDSブログへ統合する以前のddpostの記事です。

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