海外企業視察レポート #3 イスラエル vol.1 現地で体感したイノベーションが起きる理由
「中東のシリコンバレー」と呼ばれるイスラエル。GAFAを始め、Microsoft、Intel、IBMなどグローバルIT企業など300社以上のR&D拠点となっています。
dd posts(ディーディーポスト)を運営するTDSは、2019年12月にイスラエルへ訪問し現地スタートアップ企業やインキュベーションカンパニーとのミーティングを経てイスラエルのハイテクエコシステムと彼らと協業する際のポイントを体得しました。
今回のvol.1ではイスラエルのハイテクエコシステムについてご紹介します。
イスラエル基礎情報
イスラエルのハイテク エコシステム
四国程度の小国でありながらイスラエルは“Startup Nation”と呼ばれており、サイバーセキュリティ、フィンテック、AIなどのハイテクスタートアップのハブとして世界的に注目を集めています。
2017年に開業したスタートアップの数は約700社。
なぜこれほどまでにスタートアップが生まれやすいのか。その理由はイスラエルのエコシステム生み出す好循環にありました。
政府
国にとってテクノロジーは重要な資産だと考えており、Israel Innovation Authorityという政府系のスタートアップ支援機関を50年前に設立。イスラエル経済産業省の一部として機能してきましたが、現在は独立の組織として運営しています。
Israel Innovation Authorityについて
https://israel-keizai.org/wp/wp-content/uploads/2018/07/RD2017.pdfIsrael Defense Forces(イスラエル国防軍)
イスラエルは18歳以上の男女に約2年間の徴兵義務があります。個人のスキルに応じて配属され、兵役期間中に軍隊が持つ先進技術や集団で行動する際のストレスマネジメント、マインドセットを醸成します。一般的にはこの期間で自分自身を見つめ直し、キャリアはその後決定すると言われています。
補足:ユニット8200(諜報部隊)、ユニット9900(画像解析情報部隊)というエリートしか配属されない部隊の出身者が兵役中に培ったスキルを活かし、起業するケースもあります。大学
学問だけでなく、ビジネスのスキルも必要であると考え大学にはイノベーションプログラムが設置されています。このプログラムを通して起業家としての経験や洞察、実践的な戦略、ビジネスモデル、などを学ぶことができます。コワーキングスペース
国土が狭いイスラエルにおいてコミュニティーはとても重要なものになっています。今何が起きているかなどの情報交換をオープンに行い、ミートアップはほぼ毎日どこかしらで開催されています。
上記以外にも、投資家やインキュベーター・アクセラレーターの存在も欠かせません。
しかしハイテクエコシステムを生み出しているのは政府・軍・大学の連携だと感じました。
イスラエルスタートアップが持つ3大マインド
イスラエルは建国してまだ70年という歴史の浅い国です。
その背景には各地で迫害されてきた歴史があり、現在のイスラエルは各国から集まってきた「◯◯系ユダヤ人」で構成されています。
イスラエルにある多くのスタートアップはイスラエルで生まれ育ったユダヤ人が起業しています。
テルアビブは比較的世俗派が多く戒律が厳しい印象ではなかったですが、それでも「ユダヤ」であることの誇りを会話の節々に感じました。
「アメリカよりダイバーシティーだ」、「イノベーティブなマインドはサバイブしてきた歴史があるから」と言っていたことが印象的でした。
もちろん人により様々ではありますが、ミーティングをした際に感じた共通の特徴を3つご紹介します。
- Question everything
- 「どういう目的で訪問したのか」、「何を求めているか」思っている以上に「なぜ」をたくさん質問されます。海外視察で「なぜ」をいきなり問われることは珍しいことではありませんが、イスラエル人の特徴として本質的な会話を好む傾向にあるため、今回はいつも以上にお互いの目的をベースとしたミーティングであったと感じました。
Make mistake
失敗することを恐れません。失敗は学習プロセスの一環と捉え、失敗を回避する方法や改善方法が分かるというマインドを持っています。- Aims globally
- 国土が小さいため多くのスタートアップは起業初期から海外進出を目指します。イスラエル国内ではPoC(Proof of Consept)検証、プロダクトのテストやパイロット版の検証を行い、スケールする際に海外企業とコラボレーションを行います。
日本とイスラエルの関係
2017年に日本とイスラエルはサイバーセキュリティ分野に関する覚書を締結し、2019年には防衛分野においても覚書を締結しています。3月に日本からイスラエルへの直行便が就航することは両国の関係が強まっていることと、経済的にも需要が高まっていることの証だと考えます。
小国イスラエルにとって日本企業の力はスケールする際に必要だと言います。2017年に700社を超えるスタートアップが開業しましたが、廃業数は約半数で多産多死の状況です。そう考えると日本企業と組むこと、日本市場へ進出することは彼らにとって魅力的であるでしょう。
逆の場合も同様に、日本企業にとっても生存戦略を考えた際に彼らのハイテク技術はとても魅力的です。
しかし、イスラエル人と日本人のパーソナリティや商習慣は対局にあると言えます。
次回のvol.2では日本企業とイスラエルスタートアップが協業する際に必要なことをお伝えします。
<参照記事>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/israel/data.html#section1
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/11/88bc0aed28dba1b5.html
https://www.statista.com/statistics/966307/israel-number-of-startups-founded/
※この記事はTDSブログへ統合する以前のddpostの記事です。
SAKI.S
dd posts副編集長
2016年TDSの新規事業開発チームに参画し、マーケターとしてこれまで20社以上の海外デザインファームを訪問。リサーチから訪問という一連の経験から得たことを発信したいと思いdd postsのライティングも行う。東京生まれ東京育ち。最近の関心はサーフィンと釣り。