職場におけるリーダーのウェルビーイング~レジリエンスを養う~
変化する世界という新たな文脈において、常にリーダーシップ開発へのアプローチに発展が求められてきました。今回は、ここ数年関心が集まっている、リーダーのウェルビーイング(幸福・健康)について、Hyper IslandのビジネストランスフォーメーションチームリーダーであるPär Hellstadius氏の記事をご紹介します。
Cultivating resilience~レジリエンスを養う~
By Pär Hellstadius, Team Lead – Business Transformation at Hyper Island
(執筆者:Pär Hellstadius/ハイパーアイランド/ビジネストランスフォーメーションチームリーダー)
リーダーシップ開発における話題の中心はここ数年で少しずつ変化してきており、職場におけるリーダーのウェルビーイング(幸福・健康)について、懸念と共に、ますます関心が高まっています。リーダーシップ開発における幸福と健康というトピックはパンデミック以前から注目を集めていましたが、この1年で、私がCXOや人事のリーダーと話をする際の最重要トピックの1つとして表面化してきました。
社会や彼らの組織は、技術の進歩、グローバル化、そしてより一層の複雑化を伴うチャンスと、そして困難に絶え間なく直面しています。新たな現実によって、これらの課題を協力して解決するために縦割り構造や国を越えて団結し、共創や革新に向かうことを余儀なくされています。その結果、多くの組織が、変化のスピードに特徴付けられる多大なプレッシャーを伴う環境と共に動きが激しくなり、既知の領域や安全地帯から離れて模索し、学び、そして成長することを余儀なくされているのです。多くの場合、それは楽しく刺激的であり、創造的なものではありますが、残念ながら時に無気力やストレス、そしてパフォーマンスの低下を招いてしまうこともあります。
このことがリーダーに与える影響、そして彼らが経験する高まる要求とプレッシャーは、我々がクライアントや参加者と仕事をする際に浮かび上がるテーマです。話題は、複雑さを操り、関係を良好に保ち対立に対処し、変化をもたらし、そして効果的な協力を促すことにまで及びます。リーダーは、技術的な専門知識のみならず、社会的、感情的知性を実際に活かし、自分自身だけではなく、従業員や顧客の感情やニーズに合わせる必要があります。彼らは成功するために自分自身の能力、知識などをさらに仕事に注ぎ込まなければなりません。我々のチームは「どのようにパフォーマンスするかが、あなたが得る結果である」というモットーと共に取り組んでいます。これは、あなた自身の存在価値と、他者、プロジェクト、ワークショップ又はミーティングに影響を与えうるあなた自身がもたらすマインドセットの両方に重点を置いています。
変化しなければならない事を認識する
この新たなトレンドは、より進歩的でファシリテーター的なリーダーに新たな機会をもたらし、より人間中心的な職場づくりへの可能性をもたらします。これに伴って、関与の度合い、信頼の度合い、業績、そして幸福の度合いが上昇するのです。
しかしながら、結果として得られるのはメリットだけではありません。このような変革を行う際には注意が必要です。というのも、その役割に就いている個人に大きな負担が掛かり、新たな期待というものがこれまでのものよりもかなり漠然としていて、より流動的になりうるからです。「物足りない」という感覚が絶えずつきまとうのです。
Karasek(心理学者)とTheorell(生理学者)のストレスに関する理論は、要求、コントロール、サポートの概念を導入することにより、負のストレスがどのように生じるかを理解する枠組みとして、多くの意味で金字塔となっています。この理論では、外部環境によって課される期待(要求)、これらの要求に対処する能力(コントロール)、そして自身が帰属する家族や社会(サポート)とのバランスが必要であるとしています。たとえば、直面する要求を満たす能力、社会的サポート、そして権限が不足すると、負のストレスが生じるといわれています。
厄介なことに、外部環境により我々に課せられる要求はすぐに変化することはありません。このため、ストレス源を避けようとする従来のストレス対処法では不十分なのです。これから進むべき道は、物事が変わるように願うことでも、「元に」に戻ることでもありません。
幸いなことに、科学によってコントロールのセンスを磨き、より多くの社会的サポートを得る方法が多く示されており、さらにこれを効果的に行うためのツールと実践を提供してくれる新たな科学が存在するのです。前に進む方法は、リーダーのコントロールとサポートのレベルを上げ、このことでレジリエンスを高めることにより、困難な環境の中に立ち、これに対処するリーダーの能力強化を図ることです。
(出典:https://workingwithact.com/what-is-act/act-in-the-workplace-research-references/)
レジリエンスという言葉は異なる文脈において使われ、困難、逆境そしてストレスを吸収し跳ね返す能力であるとされます。レジリエンスは、今この瞬間とのより強いつながりをつくり、より深い目的意識を築き、自身の意志作用を強化し、そしてより意味のある形で他者とつながることができるという、斬新な実践を通じて養うことができるのです。
(出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5783379/)
リーダーになるためのロードマップはありません。挫折、衝突、そして変わりゆく期待のようなものに従って紆余曲折があるでしょう。変化や複雑さに入り込むほど、道はより一層不安定で予測不能になります。レジリエンスはこれらの困難を避けることではなく、より巧みに、より効果的に切り抜ける方法を模索することです。アメリカのJon Kabat-Zin教授(マサチューセッツ・メディカル・スクール大学)は、「波を止めることはできないが、波の乗り方は学ぶことができる」と言っています。
現代のワークライフという、遠隔で時に混沌とした現実において、リーダーにパフォーマンスを発揮し成功することを望むのであれば、我々が教えるべきはより多くの木を切る方法ではありません。将来におけるリーダーシップ開発には、リーダーが鋸の刃を研ぐことへの支援について、より重点を置く必要があるのです。
※この記事は、原文:The Evolution of Leadership Developmentを、許可を得て翻訳、編集したものです。
※この記事はTDSブログへ統合する以前のddpostの記事です。