デザイン思考とは?必要とされる理由から、プロセスや身に着け方までわかりやすく解説
近年、デザイン思考(デザインシンキング)という言葉がよく聞かれるようになりました。
デザイン思考とは、簡単に言うとデザイナーの思考方法を非デザイナーのためにビジネスや経営に応用できるよう体系化した思考方法のことです。
この記事では、初心者の方向けに、デザイン思考とは具体的にどのようなものなのか、なぜデザイン思考が必要とされているのかなどを、Hyper Island Japanのファシリテーターであり、国内企業へのデザインシンキング講師も務める、萩原 幸一氏に伺いました。
萩原 幸一氏プロフィール
デザイン思考とは?
-デザイン思考とは、具体的にどんな思考法でしょうか?
萩原氏:一般的に、デザイン思考はイノベーションや創造的問題解を考えるための手法と言われています。
その考え方の核になるのは「ひと・使う者に、より良い価値を提供できるか」「最新技術に限らず、既存の技術の応用でも良いので実現できるか」「特別なことではなく継続的に実行可能か」という視点で新しい価値を創造することにあります。
ユーザーセントリックに問題解決をする思考方と捉える向きもありますが、たんなる問題解決ではなく、より良い未来を描くために、今ある物の延長ではない新しい価値を創造することだと考えています。
アート(思考)との違い
-デザインというとアート(芸術)を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、アートとデザインの違いは?
萩原氏:アート=芸術は、作家が内発的に表現する手法や作品を指します。そこには作家を中心とした思想、哲学、歴史を内包しています。これにおいては一意の再現性は必ずしも必要はありません。
デザインは今まで「意匠=モノの姿形を対象とする設計」にフォーカスされて理解されていることが多かったと思いますが、昨今ではサービスにおける価値創造プロセスの設計(サービスデザイン)やユーザー体験(UX)のデザイン、広義ではビジネスモデルや組織、マネージメント、経営のデザインまで意味が広がっています。ただデザインに共通して言えるのは、何か達成したい目的があり、より良い結果にたどり着くための筋道を考え、継続的に価値を出せるように設計をすることではないでしょうか。
デザイン思考が必要とされる理由、背景
-デザイン思考は、もともとデザイナーの思考方法を体系化したものですが、なぜ今、モノづくりの現場だけではなく、ビジネスやサービスにおいて必要とされているのでしょうか。
萩原氏:日本が先進的だと言われていた時代は、まだ製品も技術も未成熟な物が多く、人々の不満や希望が明確でした。メーカーの技術者はその不満に真摯に向き合い、技術を進歩させ改良を加えて、便利で使い易い物を作ってきました。これはプロダクトに限ったことではありません。
しかし現代は、すべての物がある一定の水準を超えコモディティ化しています。さらに取り巻く環境も複雑に関わり、一筋縄ではいきません。今までの延長線上には新しい未来はないのかもしれません。そんな時代の空気の中で、あらゆる業界において、デザインが持つ「物事の本質を探り、価値を伝える考え方」を通して、今までの延長線上にはない、より良い答えにたどり着こうというチャレンジが必要になっているからです。
デザイン思考のプロセス
-具体的なデザイン思考のプロセスについて教えてください。
萩原氏:もっとも知られているデザイン思考のプロセスは、スタンフォード大学のd.schoolが提唱する以下の5ステップです。
- 【ステップ1】Empathize:共感
- 【ステップ2】Define:問題定義
- 【ステップ3】Ideate:創造
- 【ステップ4】Prototype:プロトタイプ
- 【ステップ5】Test:テスト
これをさらに俯瞰してみると、3つの大きなプロセスになります。
共感~問題定義
始めのステップでは、人・ユーザーにフォーカスし、その人が抱える問題やかなえたい希望を洞察し、その事がらの本質を理解することで真意課題を定義します。上の5ステップの1. 共感〜2.問題定義ですね。この時は、分析の結果が大事なのではなく、とらえたインサイトのどこに注目するのか、自分たちはどのようにこの課題に向かっていくかを合わせて定義しておくことが重要です。創造
次に、先のプロセスで生まれた、真意課題のためのアイデアを考えるのですが、優れたアイデアを出すというのは、発想に長けたアイデア・マンが一人でやることではありませんし、ある日突然、雷に打たれたように閃くとか、一足飛びに製品やサービスのような大きなアイデアが出来上がるものではありません。小さなアイデアを積み重ねる、幾つかのアイデアを掛け合わせることで、ユニークなアイデアになっていきます。ここで大切なのは、先のプロセスで見いだしたインサイトに寄り添って段階的に考えること、常にそれを頭の片隅に置いて発想することで、ユーザーに響く良いアイデアに必ずなります。プロトタイプ~テスト
プロトタイプ=「試作」というと、製品に近い美しくモデルアップされたイメージがあるかもしれません。ここで言うプロトタイプは、見た目に美しい物ではなく、アイデアを他者が手に取れる状態にし、試してもらえるようにすることです。プロトタイプは造ることが目的ではなく、それを使ってテストを行い、正していくことで、アイデアをブラッシュアップしていくことに意義があります。ですから「プロトタイプ」〜「テスト」は必ずセットになり「プロトタイピング」をしていると考えています。
プロセスとしては、このような流れになるのですが、このプロセスを一本道で一回やれば良い製品が完成するというわけではありません。プロセスを何度も行き来し繰り返しながら、テーマとアイデアの精度(解像度)を上げていくことがデザイン思考の本質です。そしてもう一つの本質は、同じ文脈を理解したメンバーが同じメソッドでチームとなって取り組むことではないでしょうか。
デザイン思考を身につけるには
– 手に取れるプロトタイプを作ってテストをしつつ、プロセスを何度も行き来し、またチームのメンバーと協力しながら、モノやサービスを作り上げていくということですね。とはいえ、いざ実践するとなるとハードルが高く感じてしまうのですが、デザイン思考のスキルを身につけていくにはどうすればいいのでしょうか?
萩原氏:デザイン思考を実践する上では個人のスキルは必ずしも大きな要因ではないと思います。
デザイン思考は、サプリメントやドーピング剤のような劇的な物ではなく、基礎運動能力を上げる筋トレや素振りのような物で、息を吸うようにデザイン思考で考えられるようになるように定着させることが大切です。ただ、これでは漠然として捉えづらい概念になってしましますので、まずはこのステップに沿って実際にやってみることだと思います。
デザイン思考の解説書は数多あり、読んだことがある方は「言っていることは判ったような気がするが、結局何なんだろう?」と思ったことと思います。
頭で理解するより、実際に体感する方が理解しやすいと思いますよ。
そのためには、演習用の課題を設定して短期集中でデザイン思考のプロセスを体験するブートキャンプ式の実践講座は有効です。
さらにブートキャンプで体感した知識を定着するためにも、時間をあけずに、もう一度深いテーマ(実際に身近なテーマ)で実践してみることです。この時にはプロセスをなぞって一周するだけではなく、イテレーション(一連のプロセスを短期間で何度も繰り返すことで解像度を上げていくこと)まで体験することが重要です。
こうすることでデザイン思考を自身に定着し、生かしていくことができるようになると思います。
-なるほど。Hyper Island Japanのオープンコースでも、デザインシンキング(デザイン思考)のコースがありますよね。実際にどんなことが体験できるのでしょうか?
萩原氏:プラグラムでは、デザイン思考による顧客視点でビジネスを考えるマインドセットを養っていただくために、座学や理論のレクチャーだけでなく仮のテーマを設定し、実際に顧客のより深いニーズを探り、アイデア創発、プロトタイピングを行い小さく試すという、デザイン思考のコアになるプロセスを実際に感じながら、体験を通じて学んでいただけます。
また、2日間を通して多くの時間をグループワークで行います。職種もキャリアも、デザイン思考の理解度も違う参加者がいきなりチームメンバーとなり、デザイン思考という共通言語を得ながら課題に取り組みアイデアを纏めて行くことを、短時間に凝縮して体験していただきます。
このような機会は日常の業務の中ではなかなかできないでしょうから、多くの方にとって良いチャレンジになると考えています。
Hyper Island Japanでは、デザインシンキング(デザイン思考)も学べるアクションラーニングプログラムの受講生を募集しています。リモート集中型で、実際に手を動かしながら学ぶことで、より仕事への応用力がある、実践的な講座となっております。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
https://www.tds-g.co.jp/hij/action_learning/
※この記事はTDSブログへ統合する以前のddpostの記事です。