トップページ事例紹介日本の“今年”を漢字一字で刻む。30回の節目に「今年の漢字®」の表現を一新

日本の“今年”を漢字一字で刻む。30回の節目に「今年の漢字®」の表現を一新

#ブランディング#Webデザイン#グラフィックデザイン

公益財団法人 日本漢字能力検定協会 さま

毎年、日本の年末を彩る「今年の漢字®」。一年を振り返り、時代を表す「一字」を後世に伝える日本の風物詩といえる行事です。2024年「今年の漢字®」が30回の節目を迎えるにあたり、日本漢字能力検定協会さまよりロゴマークやコンテンツサイトデザインのご相談をいただきました。
プロジェクトをご一緒させていただいた石丸さま、小林さまに、弊社ブランディングディレクターの下山を加え、その想いやプロジェクトに対する率直な感想などを聞きました。

対応内容 ロゴ開発、コンテンツサイト制作
期間 約3ヶ月

<公益財団法人 日本漢字能力検定協会|普及企画部>
(写真左)小林 泰貴さん:好きな漢字 “泰”、 (写真中)石丸 達也さん:好きな漢字 “挑”

<株式会社テイ・デイ・エス|ブランディングディレクター>
(写真右)下山 裕策:好きな漢字 “策”

「今年の漢字®」ロゴとコンテンツサイトを新設する背景

━30回の節目おめでとうございます!多くの方が楽しみにしている行事ですが、あらためて「今年の漢字®」の概要や歴史について教えてください。

石丸:ありがとうございます!「今年の漢字®」は、1995年から漢字の素晴らしさや意義を伝える啓発活動としてスタートしました。あまり知られていませんが、毎年12月12日“いい字一字”の漢字の日に、京都の清水寺で森清範貫主の揮毫(きごう)により発表しています。日本漢字能力検定協会や清水寺が一字を選んでいると思われがちですが、日本全国の皆さんの応募によって、最も数が多かった一字を「今年の漢字®」として発表しています。

━今回、ロゴやコンテンツサイトを新設する理由、弊社にデザインを依頼いただけた経緯などを教えてください。

小林:以前から「今年の漢字®」の行事を通して、応募から発表まで一貫性のある体験を皆さんに提供したいと思っていて、散在している情報を集約し、ロゴやサイトなどの表現面にも統一性を持たせるべきと考えていました。今回、30回の節目もあり、このタイミングを活用しました。

石丸:「今年の漢字®」は、報道等を通して認知いただけていますが、「行事の趣旨」や「参加型の行事」という認知はまだ低いと感じています。皆さんの知る「見る風物詩」から「参加して意義を感じる風物詩」へ認識を変えていくためにも、趣旨を理解いただけるようなコンテンツサイトが必要でした。そんな中、テイ・デイ・エスさんにロゴ制作とサイトデザインの相談をしました。

小林:当初、相談した際は「京都」や「日本の伝統」を意識した「和」のイメージを伝えながら相談しましたよね。テイ・デイ・エスさんは、それを覆す形で「ジャーナリズムデザインをコンセプトにしたい」という提案で返してくれました。そのセンスにとても惹かれて、会議で取り上げたところ、全員一致でテイ・デイ・エスさんにお願いしたい運びになりました。

石丸:提案の中では、漢字の裏側にある時代背景を想像しやすくするビジュアルやキャッチコピーの表現方針が示されていて、どうしても文章での細かな説明に頼りがちな私たちの課題意識に刺さりましたね。

下山:ありがとうございます。相談いただいて、僕自身も昔を思い出しながら過去の「今年の漢字®」を振り返りました。
純粋に応募数で選ばれているので、震災の「震」や「毒」のような深刻そうな漢字もあれば、「金」のようにオリンピックの金メダルを想起させる愉しげな漢字もあって、日本の一喜一憂が忖度なしに表現されてると感じました。そう考えた時に「伝統」や「和」というよりも「社会派」の印象がとても強くて、綺麗事だけではないコンテンツの素晴らしさをきちんと表現したいなと思いました。

小林:おっしゃる通り、暗くなりがちなテーマになることも多いのですが、コンテンツサイトでは、明るいニュースも暗いニュースも世相の反映として、上手くグラデーションの色彩を使った表現で提案をいただけたのがとても良かったです。

━伝統や知名度のある行事の表現を一新するプレッシャーはありますか?

石丸:漢字って誰のものでもないので「全国の皆さんに選んでいただいた一字をお預かりして、世に還元しなければいけない」という重みをいつも感じています。30年続けてきた先人や、一緒に運営する清水寺さん、楽しみにしてくれている皆さんの期待を裏切らないようにという気持ちが常にあって、ただ踏み留まってしまうと世の中に飽きられることもあるでしょうから、見せ方や伝え方を変えて、興味をもっていただく必要があります。今回、これまでの伝統を守りながらも、新しいチャレンジをしていくことにプレッシャーはありましたね。

小林:そういう意味では、今回はかなりチャレンジしましたよね。これまでも、例えば小学生の皆さんに「未来の漢字」を書いてもらうなど、周年イベントはあったのですが、Webサイトやロゴなどのビジュアル表現面にテコ入れをするのは、実は初めての試みなんです。ロゴもこれまで一貫して使っているものがなかったので、制作自体、初めての取り組みになります。

ジャーナリズムで表現する「今年の漢字®」の本質的な魅力

━「今年の漢字®」のシンボルマークともいえるロゴのデザインを依頼いただいて、どのように開発を進めましたか?

下山:「ジャーナリズムデザイン」のコンセプトを考えた時点で、カラフルなコンテンツサイトに30年の歴史を感じるどっしり構えたロゴを据えたいというイメージはありました。
設計の際は、「今年の漢字®」の左右両端の“今”と“字”の2文字を大きくして、ロゴの中心にある“の”を小さく配置しています。一見で「“今”を表す“字”」と認識させたかったのと、「票の集約」をロゴの中心部への奥行きで表現したかったのが狙いです。手書きで作字した後にPCで精緻化して検証を重ねた結果、「縦線は太く横線は細く」という明朝体のセオリーを守ることで「時代に左右されない耐久性」や小さく使用しても崩れにくい「サイズ感の耐久性」を実現できました。

━ロゴデザインを見た第一印象はいかがでしたか?

石丸:とても良かったです。私たちも、普遍性のあるロゴにしたいと考えていたので、今という時代に寄せる方針ではなく、歴史や行事の魅力を表現する意図で作成いただいたロゴを見て、私たちの想いを汲んでいただけたなと思いました。

小林:私もとてもよい第一印象でした。サイズを変えても同じように見えるバランスも良かったですし、これまでの歴史を踏まえながら、だからと言って、古さも感じないので、流行り廃りに左右されずに長く使えそうだなと感じました。

下山:周年ロゴであればトレンドに寄せたり、これまでの30年だけを考えたアプローチもありましたが、恒久的な「今年の漢字®」コンテンツのロゴなので、長く使用できる耐久性のあるデザインにすることは、制作する上で大きなポイントと考えました。

石丸:今回、私たちも含め、メインで携わるメンバーと「自分たちが愛着を持って、今年の漢字®を世に広げるために本当に良いと思えるものにしよう」という話をしていました。そういう意味で、出来上がったデザインを見て、私たちの意思統一にも貢献してくれたデザインになったと感じています。

下山:ロゴは「ブランドの旗印」の役割を持つものなので、その感想はとてもありがたいです。

石丸:協会内でもとても好評で、このロゴをどの媒体にどう載せようか、ポスターならどんな額に入れて、ユニフォームなら何色でという話が既に行われています。もともとテキストコミュニケーションの文化が色濃い組織なので、今回、デザインを使ったコミュニケーションを強化するきっかけになったと感じています。

下山:テキストでもコミュニケーションや議論は出来ますが、「異なる視点」だったり「広がり」を持たせるというのもデザインの役割なので、弊社が掲げる「デザインで価値を創出する」が実践できたという意味でもとても嬉しいです。

石丸:今回、本当にデザインの可能性を感じていて、表現を一新することで、新たにどんな方に興味を持っていただけるだろう、どんな応募者の方に出会えるだろうと楽しみにしています。

━コンテンツサイトやキーメッセージ「ゆく年、くる年、伝える一字」の開発も同時並行で進みましたが、こちらの解説もお願いします。

下山:コンテンツサイトは、「漢字一字の背景にある、さまざまな社会を写すジャーナリズムデザイン」をテーマに、色彩、漢字、線画の組み合わせでキービジュアルを作りました。素材がシンプルなだけに少しのズレで印象が変わるので、細かいチューングを繰り返しました。また、歴代の漢字紹介は、時代背景の答え合わせができるようなコンテンツとして作りました。

キーメッセージについては、年末の振り返り⾏事としてだけでなく、未来へ受け継ぐ「記憶の資産」としてメッセージ化しました。実は、提案前には、大量の案があったのですが、コピーライターと何度も推敲して、意味やイメージに誤解や齟齬がないか細心の注意を払って案を絞り込みました。

━コンテンツサイトやキーメッセージの印象はいかがでしたか?

石丸:良かったですね。もともと例年の行事を守るという視点はあったのですが、テイ・デイ・エスさんとのディスカッションを通して「日本の記述史を積み重ねて、過去と未来をつないでいくもの」という新たな視点に気付かされました。
それと、「今年の漢字®」って、参加すると漢字を一字を考える過程で「この漢字ってこんな意味もあるんだな」と漢字の「多義性」に気付くんです。これはニュースで結果を見るだけだと気付きにくいことなんですが、今回のコンテンツサイトでは、この多義性に気付きやすい構成や仕掛けになっていて、テイ・デイ・エスさんの表現へのこだわりと、私たちが伝えたいこだわりが重なった瞬間でした。

小林:付け加えると、今回デザイン面でも漢字の「多義性」をしっかり表現できましたよね。カラーリングもそうですし、背景に使用した漢字のレイアウトも隠れている部分が想像力を掻き立てますし、漢字の奥に散りばめたイラストも普遍性を持たせるという意図で線の数や太さなど細部にもこだわって理想が叶ったと思っています。こうした構成要素が時代背景や多義性を表現できていると思っていてとても気に入ってます。

下山:サイトを訪問した方が過去の「今年の漢字®」を見る際の体験として「この年の漢字は“税”でした」とすぐに答えが見えてしまうと、そこで思考が止まるなと感じたんですよね。なので、ユーザーに少し考えていただく仕掛けにしました。
年末に「あの年の漢字ってなんだっけ?」とクイズを出し合う風景があっても良いですし、サイトデザインの表現も含めて「今年の漢字®」というコンテンツが、誰かのコミュニケーションや漢字への興味のきっかけになれたら良いですよね。

新たな表現で漢字の魅力を伝え続ける「今年の漢字®」の今後

━今後、作成したロゴやコンテンツサイトはどのように展開される予定ですか?

石丸:直近ですと、漢字能力検定の成績優秀者表彰式で活用します。今年の10月の検定でも、東京か大阪のどちらかの会場に「今年の漢字®」と新しいロゴを使った解説パネルを展示しようと計画しています。あとは、30回記念特別展示として熊谷市の大温度計の前に「暑」と一緒に持って行ったり、年末の行事の際ももちろん使用します。
今後は、雑誌やテレビ、カレンダーなどいろいろな媒体でも紹介してロゴも含めて「今年の漢字®」に親しみを持っていただきたいですね。

━ロゴやコンテンツサイトを見ていただく皆さんに、どんなことを期待しますか?

石丸:最初に思うのは「漢字ってやっぱり面白い」と思って欲しいです。なぜ漢字一字を発表しているかという背景でもあるんですが、「今年の漢字®」は、漢字だからこそできる表現を広くわかりやすく伝えられるコンテンツだと思っています。日常生活の中で、言葉についてそこまで深く考える機会は少ないと思っていて、コンテンツサイトを見た時に、漢字や言葉について考えたり、興味を持つきっかけになってくれると嬉しいです。

小林:今回、表現の一新を通して、先ほど話をした一貫した体験を感じてもらえるようになりました。つまり、今回のロゴやコンテンツサイトのデザインなりメッセージを見て、「今年の漢字®」を思い出してもらえるようになったと思っています。見た方が「今年の漢字®」を想起して、友人や家族と過去の出来事を振り返ったり、漢字を学ぶきっかけになれば嬉しいです。あとはシンプルに見た目がとても気に入っているので、いろんな方に見ていただきたいですね。

━ありがとうございました!

「今年の漢字®」 コンテンツサイト

https://www.kanken.or.jp/kotoshinokanji/

テイ・デイ・エス制作メンバー

プロデュース&ロゴデザイン:下山裕策
Webディレクション:吉田麗美、秋元浩
Webデザイン:髙橋若那
コピーライティング:池田智美、伊東 久瑠実

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